1990年の開設当初、キャンパス全体のネットワーク化などで教育界を驚かせた慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)。就職氷河期には「就職率5割割れ」と報じられ、現在では「普通の学部になった」と評されるまでに変化した。その軌跡を振り返る。
就職率48%報道とSFC側の反論
2002年11月2日発行の『週刊現代』は、〈慶應SFC「就職率」5割を切った!〉と題する記事を掲載。〈二つの学部をあわせると、1019人の卒業生のうち就職したのは490人にすぎず、「就職率」は48%なのである〉と報じた。記事中には〈もはやプータロー製造工場だ〉という見出しもあった。
この「SFCバブル」について、後にSFCの学生が運営するニュースサイト『SFC CLIP』が検証している。2010年4月16日の記事によると、『週刊現代』の報道はSFC内でも話題になり、就職課がSFCのサイト上に反論を出す事態となった。反論の内容は、「就職率が低く見えるのは、進路届を出さない学生が、統計上『その他』に分類されてしまうからだ」というものだった。
同記事は、進路届を出さないルーズな気質が一部のSFC生にあったとし、〈当時を知る卒業生も「確かに当時のSFCには変なエリート意識のようなものがあった」と語る。隔離された自由な環境で育まれるSFCならではの特殊な気質が、良くも悪くも卒業後の社会生活に影響したのは確かだろう〉と続けている。
「平時」への移行と起業家の台頭
その後、SFCへの世間の目は「平時」へと移行していく。賞賛も批判もされなくなっていくのだ。〈SFCのキャンパス単体を取り上げて批評を加える記事は、現在では見られない。取り上げられるとすれば、慶應義塾についての特集が行われる中で、SFCにもはやかつての勢いが無いことへ言及がある程度だ〉と指摘されている。
2010年代に入ってからは、活躍している起業家にSFC出身が多いと話題になることがたびたびあった。それはSFCが目指した、問題発見・解決という教育が結実したことを表しているかもしれない。ただ現在は、SFC出身の起業家が特別注目を集めているとは言えない。今は大学発ベンチャーも増え、起業支援に力を入れている大学も多い。
「普通の学部」化と現在地
1990年に教育界を驚かせたSFCだが、他大学にモデルとされたこともあり、似たような学部も増えた。2023年12月9日の『週刊ダイヤモンド』には、〈異彩ぶりが薄れ、塾関係者の中には「おとなしくなった。普通の学部になった」とシビアに評価するものも少なくない〉とある。
開設時、キャンパスをネットワーク化したことは大きな話題になったが、今は皆がスマホを持ち、どこからでも世界にアクセスできる。SFCだけが特別な空間だった時代ではない。多くの大学で都心回帰が進む中、SFCの現在地が問われている。



