出雲・経島沖の海底に謎の階段や参道跡、ダイバーが25年追うロマン
経島沖の海底遺跡、ダイバーが25年追う謎の階段や参道

島根県出雲市の日御碕灯台で知られる日御碕の西端にある小島・経島の沖合の海底に、階段や参道、祭祀跡のような岩や地形が広がっている。自然の産物か、人の営みの痕跡か。約四半世紀にわたりその海に潜り続けるダイバーが、「海底遺跡」のロマンを追い続けている。

「出雲の神話を感じられる海」

「ここは魚を見るだけの海じゃない。出雲の神話を感じられる海なんです」と話すのは、日御碕でダイビングステーション「アクア工房」を営む岡本哲夫さん(73)。兵庫県姫路市出身で、26歳の時に結婚を機に出雲へ移り住んだ。会社員生活を経て、40歳頃に自宅でダイビングショップを開業。2000年から日御碕に拠点を構え、海を案内している。

新たなダイビングポイントを探して潜り始めた時のことだ。灯台の真北に位置し、地元で「ボングイ」と呼ばれる水深20メートルほどの瀬で、不自然な岩の並びに気づいた。目を奪われたのは、人工的に削られたような階段状の岩。6段ほどあり、「自然だけでは説明しにくい」と感じた岡本さんは、以来、約25年にわたり海底調査を続け、亀の姿に見える巨岩「亀石」や、参道のような地形などを次々と発見してきた。

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伝承と照合、祭祀跡を発見

調査を進める上で、岡本さんが着目したのは、「昔は経島の沖合にある『タイワ』という瀬で神事が行われていた」という地元の伝承だった。実際にタイワ周辺を調べると、海底に2本の砂の帯が確認できた。岡本さんは「参道ではないか」とみる。また、「ボングイ」のほか、「サドガセ」と呼ばれる瀬でも、祭祀跡を思わせる地形などが見つかった。

近くの日御碕神社には天照大神をまつる日沈宮があるが、宮はかつて経島にあった。現在は島に鳥居が残り、そこで神幸神事が受け継がれている。岡本さんは、古代にはタイワで神事が行われていたが、のちに地殻変動や地震などで海底に沈んだのではないか、との想像を膨らませる。

考古学的結論は未定、観光にも期待

ただ、これらが人工物なのか、自然の地形なのかは考古学的な結論は出ていない。本格的な発掘調査が行われたわけではなく、岡本さん自身も「証拠探しはまだ途中。今は仮説を積み重ねている段階」と明かす。

それでも海は、多くの人を引き寄せる。動画投稿サイトなどで紹介されたこともあり、近年は全国からダイバーが訪れ、問い合わせの半数以上は海底遺跡が目的だという。

岡本さんは、抜けるような青空の下、眼下に広がる日御碕の海を見つめながら語った。「ダイバーだけではなく、観光のお客さんにも、目の前の海の下に神話が眠っていると想像してみてほしい。それだけで、この日御碕の景色がずっと味わい深くなるはずですよ」

日御碕神社は、JR出雲市駅から一畑バスで約60分、山陰道の出雲インターチェンジ(IC)から車で約30分。神社から遊歩道を数分歩くと経島が見える。アクア工房では初心者でも1万3500円(税込み)で体験ダイビングができる。問い合わせは同店(0853・54・5711)。

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