関西大倉中学校・高等学校(大阪府茨木市)は5月26日から29日までの3泊4日で、中学3年生を対象とした「屋久島修学旅行」を実施した。この修学旅行は2013年度から続いており、本格的なトレッキングや平和学習を通じて、生徒たちの成長を促すとともに、生徒同士や教員と生徒の間の信頼関係を育む場となっている。
知覧で命の大切さを学び、屋久島で自然体験に挑む
同校は2013年に、修学旅行の行き先を北海道から屋久島に変更した。中学主任の中阪紀子先生は「生徒たちが心身ともに限界に挑み、それを仲間と乗り越える『達成感』を一層味わえる場にしたいと考えました。厳しい自然環境である屋久島は、3年間の宿泊行事を締めくくるにふさわしい舞台だと思います」と説明する。
同校の宿泊行事は、中1で4月の「オリエンテーション合宿」と7月の「林間学舎」、中2で2月の「スキー実習」を行う。それらの集大成となるのが、中3の「屋久島修学旅行」だという。「中学での宿泊行事の集大成ですが、広い世界へと踏み出すための出発点でもあります」と、中阪先生は修学旅行の位置づけを語る。
「1年生は入学直後の1泊で互いのことを知り、2泊3日の林間学舎で世界遺産・白川郷などを訪れます。2年では本格的なスキー実習に挑み、3年で大自然と自分自身に向き合う。この一連の流れを通して、困難に直面しても諦めない粘り強さと、周囲と協力する力を育みたいと考えています」と、中阪先生は宿泊行事の狙いを説明する。
今回、中3生たちは5月26日、伊丹空港から鹿児島空港へ向かい、バスで鹿児島県南九州市の「知覧特攻平和会館」で平和学習を行った。2日目は、鹿児島港から高速船に乗り、約2時間かけて屋久島に移動。島内ではバスで環境文化村センターや屋久杉自然館、千尋の滝などを巡り、その後、屋久島観光センターで、3日目のトレッキングのためにレンタル靴のサイズ合わせを行った。島内のホテルに引き揚げて入浴・夕食を終えると、午後9時には全員が就寝したという。
「屋久島修学旅行」は例年、「知覧特攻平和会館」での平和学習からスタートするという。「知覧での学びは、生徒たちの心に深い共感を呼び起こします。この精神的な土台があるからこそ、その後の過酷なトレッキングにおいても、互いを思いやる気持ちが自然と芽生えるのです」と中阪先生は語る。
山本恭平君(中3)は「特攻隊員の方々が家族に宛てた遺書を読み、自分たちと同じくらいの年齢で亡くなっていった事実を突きつけられました。今、僕たちが当たり前のように修学旅行に行けることが、どれほど幸せなことなのかを痛感しました」と語る。山口真奈実さん(中3)も「平和学習を経てから屋久島に向かうことで、目の前の景色や仲間との時間が、より一層大切なものに感じられました」と振り返る。
過酷なトレッキングを通して仲間と共に限界を超える
3日目の28日、生徒たちは修学旅行のハイライトであるトレッキングに挑んだ。コースは、それぞれの希望や体力に合わせ、往復約22kmの「縄文杉コース」と、往復約5.5kmの「太鼓岩コース」が用意され、約80人が「縄文杉コース」、約50人が「太鼓岩コース」を選んだ。
「縄文杉」は数千年の樹齢を誇る巨木で、荒川登山口から島の最高峰・宮之浦岳へ続く途上にそびえている。「縄文杉コース」を選んだ生徒たちは約8.5kmのトロッコ道と約2.5kmの登山道からなるコースをひたすら歩いた。
「縄文杉コース」を約10時間かけて歩いた山本君は、「最初は『完歩してやるぞ』と意気込んでいましたが、後半は足が棒のようになり、一歩出すのもやっとでした」と話す。特に足場の悪いトロッコ道の終点からの急勾配は最大の難所だったというが、そこを乗り越え縄文杉に到達すると、「数千年もの時を生きてきた圧倒的な生命力を前に、自分の悩みなんてちっぽけなものだと思えました。ここまで一緒に歩いてくれた仲間の顔を見たとき、最高の達成感を味わいました」と振り返る。
「太鼓岩コース」は、急流沿いの岩場を歩いたり、苔むす森を抜けたりする約5時間のコース。「縄文杉コース」ほどではないが、トレッキングに慣れていない生徒にとっては決して楽でない。「太鼓岩コース」を選んだ山口さんは、「あまりのしんどさに、途中で涙が出そうになりました。でも、前後を歩く友達が『あと少しだよ』『一緒に頑張ろう』と声をかけてくれたり、手を引いてくれたりしたおかげで、なんとか前を向くことができました」と話す。
ゴールの縄文杉を目の当たりにし、太鼓岩の上から絶景を見た時の感動は「言葉では言い表せないほどでした」と、2人は口をそろえた。
教員たちもこの日、生徒と同じ重さのリュックを背負い、同じく泥にまみれ、汗を流しながら同行した。山口さんは「先生方は、私たちが一番苦しい時に絶妙なタイミングで励ましてくれました。先生も同じようにしんどいはずなのに、笑顔で背中を押してくれました。その姿を見て、『私たちも頑張らなきゃ』と勇気をもらいました」と話す。
中阪先生は「私たちは生徒たちの『伴走者』でありたいと考えています。上から指導するのではなく、同じ目線で困難を共有し、共に乗り越える。それが、本校の伝統である『温かく寄り添う』校風そのものです」と語る。
なお、トレッキングに際しては、現地の専門ガイドと密に連携し、当日の天候や生徒の体調変化に細心の注意を払ったという。万が一、リタイアが必要な生徒が出た場合でも、すぐに対応できる態勢を整え、万全を期した。
修学旅行での成長を広い世界に踏み出すための出発点に
トレッキングの翌日、大阪に帰ってきた山本君は「自分はこれだけの距離を歩き抜けたんだと、自信が付きました」と言う。「将来は屋久島で感じた環境保護の大切さを伝える仕事に就きたい」と語る。
山口さんも「初めは不安でしたが、挑戦すれば道は開けるということを学びました。これからの受験勉強も、修学旅行で培った粘り強さを生かして乗り越えたいです」と意気込みを見せた。
「屋久島修学旅行は宿泊行事の集大成ですが、中学生活の終わりではなく、広い世界へと踏み出すための出発点です。ここで培った絆と自信を糧に、高校へ、そして社会へと力強く羽ばたいていくことを願っています」と、中阪先生は語った。