公正取引委員会は7日、缶ビールなどの出荷価格を巡るカルテルを結んだ疑いで、ビールメーカー大手4社に対する強制調査に乗り出した。激しい市場競争を演じてきた各社が、裏で話し合って価格を決めていた可能性が出ている。公取委は近年、価格カルテルの摘発に力を入れており、今後全容解明を図る。
4社の管理職クラスが値上げ幅や時期を話し合った疑い
強制調査を受けたのは、アサヒビール、キリンビール、サントリー、サッポロビール(いずれも東京)。4社は遅くとも数年前から家庭用の缶ビールや発泡酒など、ビール類の出荷価格の値上げ幅や時期について、管理職クラスで話し合って決めていた疑いが持たれている。業界団体「ビール酒造組合」の定例会合「一木会」の後に各社幹部が集まるなどして情報交換をしていたとみられる。
ビールは、メーカーが決めた価格で卸売業者に出荷される。その後、スーパーやコンビニエンスストアなどの小売店などに流通するが、店頭での4社の主力商品は、ほぼ同価格帯で販売されることが多い。
店頭価格はほぼ横並び、一斉値上げに疑問の声も
350ミリ・リットル缶の店頭での想定価格は、アサヒの「スーパードライ」、キリンの「一番搾り」、サッポロの「黒ラベル」はそれぞれ228円前後、サントリーの「サントリー生ビール」は212円だ。小売り大手の関係者は「仕入れ価格も数円しか違わなく、ほとんどが横並びだ」と明かす。
2022年10月と25年4月には、原材料やエネルギー価格の高騰を理由に4社が出荷価格を一斉に改定。改定日がそろったことに対し、当時、業界内では「各社が事前に値上げで手を握っているのではないか」(関係者)と疑問視する声もあがったという。
経営層の関与が焦点に、消費者からは不満の声
公取委は今後、押収した資料やメールなどの分析を進めた上、関係者から聞き取りを行い、カルテルの全容を本格的に調べる。関係者によると、一部のビールメーカーでは会合で話し合われた中身が上層部まで報告されていたといい、各社の役員クラスを含めた経営層がカルテルを主導していたかどうかも調査の焦点になる。
国内ビール市場は、大手4社が9割超のシェア(占有率)を握る「寡占市場」だ。独占禁止法に詳しい伊永大輔・東北大教授によると、ビール業界はシェアが高い数社で価格が同調しやすい寡占市場として、以前は値上げ理由を公取委に報告させるなどメーカー間の一斉値上げが注視された業界の一つだったという。
その上で、「カルテルの会合に出席した担当者を特定した上で、会合で何が話し合われ、会社の値上げ判断にどう影響を及ぼしたのかなどが問題となる。組織全体の意思決定の流れを明らかにし、カルテルの全容解明を図ることが望まれる」と話した。
4社に強制調査が入ったことを受け、スーパーの担当者や商品を手に取る消費者からは不満の声があがった。東京都足立区の小型スーパーでは、客を呼び込むために他のスーパーや販売店より安く売っているという。男性責任者は、「メーカーだけが、示し合わせて不当に利益を得ていたとしたら納得できない」と苦々しい様子だった。
年金暮らしの中でも毎日の晩酌を欠かさないという足立区の無職男性(78)は、「カルテルが事実であれば裏切られた気持ち。我々のような消費者をいじめないでほしい」と声を絞り出した。