2020年度から小学校5・6年生で英語が正式教科(週2コマ程度)となり、英語教育の必修化が進んだ。しかし、その効果に疑問の声が上がっている。文部科学省の経年変化分析調査(中学3年生対象)によると、2021年度と2024年度を比較した際、国語は12.7ポイント、数学は8ポイント低下したのに対し、英語は22.9ポイントも低下した。この急激な低下は、英語教育の必修化が必ずしも英語力向上につながっていない可能性を示している。
英語嫌いの増加と早期教育の弊害
さらに、「英語の勉強・学習は好きですか」という質問に否定的な回答をした小学6年生の割合も増加。2013年度は23.7%だったが、英語が教科化された後の2021年度には31.5%にまで上昇した。学習指導要領では小学校での新出単語を600~700語と定めているが、この量が多すぎるとの指摘もある。従来中学校で学んでいた内容が小学校に前倒しされたことで、難しさを感じて英語嫌いになる児童が増えている。
夏目漱石が分析した「英語力低下」の要因
歴史学者の濱田浩一郎氏は、この状況を夏目漱石の英語論と重ね合わせる。漱石は明治期の英語教育について、「英語力低下」の要因として、早期から詰め込みすぎる教育を批判していた。漱石自身は英語が得意だったが、英語嫌いの学生が増えることを危惧し、国語力の重要性を説いたという。濱田氏は「漱石の指摘は現代にも通じる。早期教育の迷走が学力格差を拡大させている」と警鐘を鳴らす。
国語力の重要性と今後の処方箋
濱田氏は、英語教育の前に国語力を鍛えるべきだと主張する。漱石も「英語を学ぶ前に、まず日本語をしっかりと身につけるべきだ」と述べていた。現代の教育現場では、英語の早期教育に偏るあまり、基礎となる国語力が疎かになっている可能性がある。文部科学省の調査でも国語力の低下が見られており、英語力低下の一因とも考えられる。
早期英語教育の効果については、国際比較でも明確な成果が出ていない。フィンランドなど英語力が高い国では、早期教育よりも国語教育を重視する傾向がある。濱田氏は「夏目漱石の警鐘を現代に生かし、国語力の強化と英語教育のバランスを見直すべきだ」と提言する。



