大阪市天王寺区の天王寺動物園で今春、ゾウを飼育するための新施設「エレファントヴィレッジ」が完成した。国内最大級の広さを誇り、ゾウがゾウらしく生きられるための様々な工夫が取り入れられている。
3頭のアジアゾウが暮らす国内最大級の施設
新施設は、マレーシアからアジアゾウ3頭を迎えるのにあわせて整備された。同動物園でゾウを飼育するのは8年ぶり。広さは従来の約3倍の約6600平方メートルで、ゾウが寝起きする獣舎とグラウンド、水浴び用のプール、砂場がある。
取材に訪れた日の朝、獣舎のゲートが開くと、ゾウたちがグラウンドに姿を現した。雄の「クラッ」(推定20歳)、雌の「ダラ」(同14歳)と「アモイ」(同10歳)だ。
餌探しや砂遊びで野生の生態を再現
グラウンド内の岩場や、鼻先しか通らない壁の穴の中に、ゾウの大好きなトウモロコシの茎などが隠されている。野生のゾウは、起きている時間の大半を食事を探すのに費やす。新施設の仕掛けは、こうした生態行動を引き出す狙いがある。
決まった時間だけ昇降するクレーンの先にも、ゾウの好物がぶら下げられている。高木の枝葉を食べる野生のゾウのように、食事を通じて首の筋肉を鍛える工夫だ。
同動物園で獣医師を務める今西隆和さん(64)が「3頭のゾウが、餌を探すのを楽しみつつ、健康も維持するようにした」と教えてくれた。
獣舎内の床を含む敷地全体には、たっぷりの砂が敷かれている。ゾウの脚への負担を減らすだけでなく、地面を掘って遊んだり、横になって寝たりできるようにするためだ。
動物福祉への配慮と動物園の歴史
ゾウの幸せを徹底的に追求した取り組みは、飼育下の動物の苦痛やストレスをできる限り減らす「動物福祉」に配慮したものだが、同動物園ならではの理由がある。
同動物園とゾウの歴史はひときわ古い。1915年(大正4年)の開園当時、大阪の中心部にいたサーカス出身のゾウを引き取って飼育したのが始まりだ。太平洋戦争中、当時いたゾウ2頭は栄養不足や病気で死ぬという悲しい出来事があった。戦後の50年には「春子」と名付けられたゾウが人気を集めて、復興に立ち上がった大阪の人々に希望を与えた。
今西さんは「過去の歴史があって、今の動物園がある。ゾウが生き生きと過ごしている姿を多くの人に見てもらいたい」と話す。
開園時間は午前9時半~午後5時。月曜休園(祝日にあたる場合は翌日休園)。入園料は大人800円、大阪市外の小中学生は200円、同市内の小中学生は無料。(電)06・6771・8401。



