歩幅が寿命を左右する?65~75歳の10年が老後を分ける
歩幅が寿命を左右?65~75歳の10年が老後を分ける

人生100年時代、本当に重要なのは「何歳まで生きるか」ではなく、「何歳まで自分の足で歩けるか」だ。実際、要介護認定率は75歳を境に大きく上昇する。その差を生むのは、75歳になってからではなく、その前の10年間の過ごし方である。本記事では、『歩幅を見れば、寿命がわかる 「死ぬまで歩ける体」のつくり方』(安保雅博著/アスコム)から、ヨボヨボ老後とイキイキ老後を分けるポイントを紹介する。

超高齢社会の現実と100歳超えの急増

「日本は超高齢社会を迎えている」「人生100年時代の到来」といった言葉を誰もが耳にしたことがあるだろう。しかし、それを「自分ごと」として考えたことはあるだろうか。著者の安保雅博氏は、私たちはすでに「超高齢社会の当事者」であり、この社会はパンク寸前の状態にあると警告する。これまでのような「国や若者たちが高齢者を支える仕組み」は成り立たなくなり、医療や介護を必要とする人の大幅な増加、労働力の減少により医療・介護サービスが十分に提供できなくなるなどの深刻な問題がすでに生じ始めている。

「体調が悪くなったら病院に行く」「要介護になったら介護保険のサービスを受ける」という、これまでは当たり前とされていたセーフティネットが機能しなくなる可能性がある。そうなると、お金の力でなんとかできる一部の富裕層以外は、具合が悪くなっても、加齢により動けなくなっても、誰からも助けてもらえない恐ろしい未来があり得る。

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厚生労働省の調査によると、日本の100歳以上の人数は1963年に153人だったのが、2025年には99,763人にまで増加した。この62年間で約652倍にも増えている。2000年時点では13,036人で、この20年ちょっとでも約7.7倍増加した。米カリフォルニア大学と独マックスプランク人口研究所の調査によると、2007年生まれの子どもの半数が107歳まで生きるという予測データもある。平均寿命が107歳という時代が近づいているのだ。

65~75歳の10年がその後の人生を左右する

100年以上生きるかもしれない時代に重要なのは、「何年生きるか」ではなく「何歳まで元気で動けるか」である。平均寿命と健康寿命の間には10年近い差がある。つまり、「人生の最後の10年前後は、誰かの手助けを必要とする状態になる可能性が高い」ということだ。

各年齢グループごとの要介護認定率を見ると、65歳以上全体で18.3%、75歳以上全体で31.5%、85歳以上全体で57.8%となる。75~85歳の年齢になると、「要介護」の割合が一気に跳ね上がる。ただし、75歳になった日を境に突然体が弱るわけではない。その前の「65歳〜75歳の10年間」にどれだけ体を動かす基盤をつくれたかが、75歳以降の「さらなる老いとの戦い」の勝敗を大きく分ける。この時期をどう過ごすかが、その後の人生を大きく左右する分岐点になる。しかし、すでに75歳を迎えた方や80代の方も手遅れではない。人間の筋肉や体は、正しい方法でアプローチすれば、いくつになっても必ず応えてくれる。「気づいた瞬間」が、老いを食い止めるスタートラインなのだ。

転倒は寝たきりの入り口

では、なぜ75歳以降になると急激に要介護の割合が増えるのか。その大きな理由のひとつが転倒である。厚生労働省のデータによると、「転倒・骨折」は要介護状態になる原因として認知症や脳血管疾患に次いで上位に挙げられている。特に75歳以降ではその割合がさらに高くなる。

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注目すべきは、転倒の多くが交通事故や高いところからの転落といった大きな事故ではなく、家の中でつまずいた、段差でバランスを崩した、何もないところでよろけたといった日常の何気ない動作の中で起きている点だ。一度でも転倒して骨折をすると、その後の人生は大きく変わる。入院や手術をきっかけに体力が落ち、「また転ぶのが怖い」という不安から外出を控え、動かなくなることで筋力が低下し、さらに転びやすくなるという負の連鎖によって、要介護状態へと進んでしまう人は決して少なくない。また、骨折した部位や重症度によっては、そのまま寝たきり生活になってしまうことが多いのも、「転倒」の怖いところだ。

転倒する人としない人の違い

転んでしまう背景には、はっきりとした理由がある。姿勢が悪く前傾になっている、太ももやお尻の筋力が弱くなっている、足首や股関節が硬くなっている、バランス感覚が衰えている。こうした体の変化が重なった結果として転倒が起こる。逆に言えば、これらを整えていけば転倒のリスクは確実に下げられる。

そして、こういった体の状態はすべて「歩幅」に表れる。姿勢が崩れれば一歩が小さくなり、筋力が低下すればしっかり踏み出せなくなり、関節が硬くなれば足が前に出なくなる。結果として歩幅は少しずつ狭くなっていく。つまり、歩幅が狭くなっている人ほど転倒のリスクが高い状態にあると言える。実際、歩幅の小ささは「転びやすさ」だけでなく、将来的な要介護や健康寿命とも深く関係していることがわかっている。歩幅は単なる歩き方のクセではなく、体の衰えを映し出す「サイン」であり、これからの健康状態、ひいては寿命をも映し出す指標なのだ。

歩く力の衰えのサイン

「外出先などで、階段や段差を避けるようになった」「気がつくと、すり足やちょこちょこ歩きになっている」「何もないところでつまずきそうになり、ヒヤッとする」――それは、「歩く力」が低下してきたという体からの重要なサインだ。歩く力の衰えのサインとしてわかりやすいのが歩幅の変化である。歩幅が狭くなると、すり足やちょこちょこ歩きになる→つまずきやすくなる→転倒や骨折のリスクが高まる→外出が減る→筋力・体力がさらに低下し、気力も低下する――という負の連鎖が起こり、その先にあるのは「歩けなくなる未来」だ。

この変化はある日突然起こるものではない。気づかないうちに少しずつ進んでいく。だからこそ大事なのは、「自分の状態に早く気づくこと」と「正しく体を整えること」である。本書では、15万人以上の患者を診療してきたリハビリの名医が、老化のメカニズムとその予防・改善方法をわかりやすく解説している。