シニアの定年後も働きたい希望、平均67.9歳で過去最高に 人手不足の背景も
シニアの定年後就業希望平均67.9歳で過去最高

定年後も働き続けたいと考えるシニアの平均年齢が67.9歳となり、過去最高を更新した。全国1289社を対象にした調査で、従業員に働いてほしいと考える年齢の平均も68.3歳に上ることが分かった。人手不足を背景に、企業とシニアの双方で「働く意欲」が高まっている。

調査結果が示す「働く意欲」の高まり

この調査は、全国の1289社を対象に実施された。従業員に働いてほしいと考える年齢(以下、就業年齢)を尋ねたところ、平均は「67.9歳」で、中央値は「70歳」だった。実際の現場で働く従業員の最高年齢の平均は68.3歳で、個別企業の最高年齢は「91歳」と、働く人たちの姿を想像するだけでうれしくなる結果だった。

企業からは「働ける方は健康であれば75歳までは働いてほしい」「人生100年時代に、70歳ぐらいまでは就業してほしい」といった声も聞かれた。

シニアの意識変化と「定年後」の選択肢

筆者の周りのシニアたちにも変化が起きている。数年前までは「起業することにしました!」「転職が決まりました!」「大学院に行くにはどうしたらいいですか?」といった報告や相談が多かったが、そういった華々しいキャリアチェンジをする人が最近はめっきり減ってしまった。

逆に増えたのが「来年定年です。賃金が下がるのは納得できないけれど、雇用延長します」「○月で定年です。関連会社に行くことになりました」といった、会社に留まる決断をした報告だ。しかも「消極的な居座り」ではなく、社内の小さなチャンスを目指して、学び、チャレンジして「自分のキャリアを発展させたい」と願う人たちが増えている。

人手不足が生む「働き続けたい」ニーズ

長寿化によって「教育→仕事→引退」という従来の3ステージの人生から、「教育」と「仕事」と「引退」の間に「再学習」「探求」「休暇」といったステージを複数回巡る、マルチステージの人生の働き方への転換が求められる時代に突入した。今や「50歳だから役職を後進に譲る」「60歳だから第一線を退き、管職に回る」といった、ステレオタイプのエイジズムは意味を持たないことを、シニアは皆分かっている。

そもそも世間では「働かないおじさん」などとシニア社員を揶揄する風潮がある。しかし、1000人以上のビジネスパーソンの声に耳を傾けてきた筆者から言わせれば「働かないおじさん」など一人もいませんでした。人生に意味を求め、他者に認められたいという基本的欲求が人間には存在するからでしょう。

実際に、米マサチューセッツ州には、高齢者を積極的に雇用して10年間で3倍まで生産性を上げ、世界的に有名になったVita Needle(ヴァイタニードル社)がある。超高齢社会の日本として、企業とシニアが互いに本気で価値を生み出し合える関係になることを願うばかりだ。

企業規模による違いと現場の声

一方で、今回の調査結果を、働く構造の観点から読み解くと、企業規模や業界による切実なグラデーションが見えてきた。

期待する「就業年齢」を企業規模別で見ると、小規模企業では「68.3歳」、中小企業は「68.1歳」、大企業は「66.8歳」となった。企業規模が大きくなるほど就業年齢が下がっている。

さらに、調査に回答した現場の声はあからさまだった。

  • 「中小企業には新しい人材が入りにくく、既存の人材を活用していくしかない」(鉄鋼・非鉄・鉱業製品販売、長野県)
  • 「求人を出しても応募がない。資格や経験が必要な業務であり、若手を育てるためにも長く勤めてほしい」(メンテナンス・警備)
  • 「正社員不足で、若手がおらず、技術の伝承が難しくなっている」(機械・機器販売、愛知県)
  • 「人材確保に苦労しており経験者にいてもらう方が安心」(建設、埼玉県)

このように、人手不足のため、既存社員に長く働いてほしいとのコメントが多数あったそうだ。

企業の「働かせ方」にこそ根本的な構造問題がある。