書作品というもの、墨色などさまざまな要因に左右されるのだが、中でも〝画竜点睛〟、印が存外の力を有する見事なアクセサリーなのだ。
宋代の名筆に魅せられて
或る時、東京国立博物館で中国の書を巡っていたのだが、宋代の名筆、米芾の巻子本(巻き物)中に捺された雅印に釘付け。それは作品を鑑賞し、感激した御仁の証しの印影なのだが、見ての通り左に鷺(私の雅号、鷺外の一字)の姿、右に〝無恙〟と。
流石にそのままパクる訳にもいかず、考えて〝仰師〟とし、親しい中国の印人に刻してもらった。
趙之謙を追いかけて
また他に、若い頃熱心に清代の書家、趙之謙を追いかけていたこともあって、〝趙之謙印〟(廻文印)を真似て〝今鷺外印〟(中国風に姓を一字に)としたり。他に何顆もあるのだが…。
堂号と門人への命名
さらに、書人夫々自分の雅号と別にさまざまな堂号(家や書斎などにつける名)を考えたりするもの。自身も〝白鷺巣主〟や、歪な面白い須恵器を手にいれた折には、自身にかけて〝偏壷齋〟などと号し、指示の形に刻してもらった。
また門人に頼まれてつけた名なのだが、御当人が大のゴルフ好き故にここはと〝芝乱亭〟とし、名の方は〝拙掌爺(へたくそなおやじの意)〟と命名。即ち―知らんてぇ殺生や-(大阪弁!である)。ついでにもうひとつ、〝禿頭学徒〟は、紛れもなく誰かの事也。
そんな風に、私共は日々大いに愉しみつつ書に勤しんでおる訳なのデス。(産経国際書会名誉顧問 今口鷺外)