イランの現体制に反対する団体「母国の自由を求める在日イラン人団体」は20日、東京・霞が関の外務省前で抗議集会を開き、イラン当局による死刑執行や拷問の停止、政治犯の釈放を求める声明を打ち出した。
イランでは1月の大規模な反政府デモが当局に武力鎮圧され、多数の市民が死亡した。2月末からは米国の軍事攻撃を受ける一方、国内ではデモ参加者らへの死刑執行が相次いでいる。
死刑執行、3月以降に56人
8月に国連人権高等弁務官が明らかにしたところでは、イラン国内で国家安全保障関連の罪に問われ、3月19日以降に少なくとも56人が処刑された。このうち27人は今年初めの反政府デモに関係していた。拷問で自白を強要されたり、短時間の非公開審理で死刑判決を受けたりする事例も指摘されている。
声明では、死刑執行と拷問の即時停止、政治犯や思想・信条を理由に拘束された人々の解放を要求した。各国政府にも、イランの現行イスラム共和体制への宥和的な対応を改め、「懸念」の表明にとどまらず具体的に行動するよう呼びかけた。
日本の「宥和政策」を批判
団体は、日本がイラン政府との交流を続ける一方、国内の同胞への弾圧を十分に問題視していないとして「宥和政策」を批判している。外務省を通じた外交交渉自体は否定していないが、日本・イラン友好議連が3月にセアダット駐日イラン大使を招くなどの交流には反発してきた。
団体の中心メンバー、ガディリ・サラルさんは産経新聞の取材に、団体が独自に得た情報では、2月末の米国とイスラエルによる攻撃以降、政治的な理由などで約120人が処刑されたと説明。「外交を続けるよりも、政治的圧力をかけて、一日でも一分でも早く死刑を止めてもらいたい」と訴えた。
世界50以上の都市でデモ
死刑執行の背景には、今年1月の大規模な反政府デモがある。昨年12月末、経済不振への抗議をきっかけにデモが全土へ拡大し、1月上旬に治安部隊が実弾を使って強硬に鎮圧したとされる。犠牲者が数万人規模に上ったとの調査報告もある。米誌タイムは、イラン保健省高官らの情報として、1月8、9日の2日間だけで最大3万人が死亡した可能性があると報じている。
国連のイランに関する独立調査団も17日、当局によるデモ鎮圧について、違法な殺害や拷問、恣意的拘束など「人道に対する罪」が行われたと信じる合理的な根拠があると指摘した。一方、米軍による学校などへの攻撃についても戦争犯罪に当たる可能性があるとしており、イラン市民は国外からの軍事攻撃と国内での弾圧の双方にさらされている。
今回の集会は、2022年9月に死亡したクルド系のイラン人女性マフサ・アミニさんを追悼する国際的な抗議行動の一環で、主催者によると世界50以上の都市で行われた。アミニさんは当時22歳。頭髪を覆うスカーフ「ヘジャブ」を適切に着用していなかったとして9月13日、首都テヘランで「風紀警察」に拘束され、16日に死亡した。家族は当局による暴行で死亡した疑いを指摘。アミニさんの死をきっかけに女性主導の反政府デモが全土に広がり、当局が武力で鎮圧。翌年9月までに未成年を含む500人超が死亡し、数千人が拘束され、7人が処刑された。
サラルさんは「もうヘジャブだけの問題ではない」と強調し、女性の服装規制だけでなく、反体制派への弾圧や死刑執行に国際社会が目を向けるよう求めた。イランのアッバス・アラグチ外相についても「イラン国民を代表する外相ではない。イスラム共和国の外相だ」と批判。日本政府に対し、「懸念を表明するだけではなく、行動してほしい」と訴えた。



