イタリア建築家デ・ルッキ氏、日本とイタリアのモノづくり共通点を語る
イタリア建築家デ・ルッキ氏、日本との共通点語る

イタリアを代表する建築家ミケーレ・デ・ルッキ氏(74)が日本で活動の幅を広げている。自身のインテリアブランド「プロデュツィオーネ・プリバータ」のフルコレクションが今年日本で初披露され、神戸・六甲山では英国の名門校「ノース・ロンドン・カレジエイト・スクール」の校舎建設が8月に始まる。2025年大阪・関西万博では北欧パビリオンの設計も手がけたデ・ルッキ氏が、作品への思いと日伊のモノづくりの共通点を語った。

プロデュツィオーネ・プリバータ、日本初披露

東京・南青山で5月下旬に開かれた展示会では、木製のコート掛けやベネチアンガラスの花器など、同ブランドの代表作が並んだ。現在は東京・西麻布のショールームで鑑賞できる。

プロデュツィオーネ・プリバータは、デ・ルッキ氏が妻で建築家のシビル・キヒェラーさんと1990年に設立。日本語で「独自生産」を意味し、他社からの依頼ではなく自身の芸術性を自由に表現する場だ。作品の背景には、職人の伝統技術と最新テクノロジーを組み合わせた実験的アプローチがある。

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「今、世の中で必要とされるのは何か。人が癒やしだと感じてくれるのは何か。手に取ってもらえそうなのは何か。自分で自分に問いかけて生まれてきた」とデ・ルッキ氏は語る。

例えば、木製スツール「ビゾンテ(バイソン)」は、都市の狭い空間で使い続けられるものへのニーズから生まれた。重ねて収納でき、コート掛けにもなる。取っ手の形がバイソンの角に見えるのが名前の由来だ。

2025年に発表されたアルチンボルドコレクションの花瓶は、野の花を愛する妻のために制作。ムラーノ島の職人が手掛けた赤いベネチアンガラス製花器に金属の台座が組み合わされている。ベネチアンガラスと金属の組み合わせは、デ・ルッキ氏が1997年の花瓶「バーゼクアドラ」で初めて取り入れたという。当時、伝統を重んじるムラーノ島の職人にとっては受け入れがたい組み合わせだった。「依頼した職人が怒ってテーブルをひっくり返して立ち去ってしまったこともあった」と振り返る。薄くはかないガラスと工業的で頑丈な金属のコントラストを表現したこの作品は、説得と技術の積み重ねの上に完成した。

「職人は同じ技を繰り返すことで技術を継承する。しかし伝統の技に縛られるだけでなく、現代人がほしがるもの、喜ぶものを解釈する必要がある。職人の技術があれば、現代的なデザインは形にできる」と力を込める。

建築とデザインの軌跡

デ・ルッキ氏は建築家として、ジョージア・トビリシの「ブリッジ・オブ・ピース」(2009年)、2015年ミラノ万博イタリア館「パビリオン・ゼロ」、2024年バチカン市国サンピエトロ広場の郵便局などを手がけてきた。日本では2017年から旧六甲山ホテルの修復を担当し、8月には六甲山でノース・ロンドン・カレジエイト・スクール中高等部の建設が始まる。

1981年には、エットレ・ソットサスが創設した世界的デザイン集団「メンフィス」に参加。原色やパステルカラーの幾何学模様のポップな作品でポストモダンムーブメントをけん引した。デ・ルッキ氏はデザインと生産管理を担当し、「華やかでバブルな時代性を反映するファッションのようなものを表現していた」と述懐。安価な印象のプラスチックをユニークなデザインで高価値なオブジェに仕上げ一世を風靡したが、メンフィスは1987年に解散。その後、1990年の湾岸危機や環境意識の高まりから「人々に安らぎや安心感を与えるのは自然素材だ」との思いを強め、職人技術を生かすプライベートブランドの設立につながった。

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日本とイタリア、三つの共通点

デ・ルッキ氏は、イタリアと日本には三つの共通点があると言う。

一つ目はモノづくりの哲学・美意識。イタリアはルネサンス以来、完璧で不変の美を追求してきたのに対し、日本は「わびさび」に代表される移ろいや一瞬の美を尊ぶ。一見対照的だが、時間とともに使い込まれる美しさを大切にする点は同じだと指摘する。

二つ目は職人技や手作業へのこだわり。人間の感覚を通じて作り出される作品こそ、AIや効率化の時代になくてはならないという。

三つ目はモノに対する考え方や空間に与える意味。デ・ルッキ氏は「モノには魂が宿る」「その魂は作り手と使い手の感性から生まれる」という考えに共感している。

建築と芸術の違いについては「視点」だと述べる。「どちらもデザインする行為は同じだが、芸術家は自分を表現する。建築家はそれを使う人のために自分を表現する。私は芸術的なセンスを職人にささげ、職人の仕事が続くようにデザインする。制作するのは職人たちです」

「機械の優位性ではなく職人技を保護することこそ、アバンギャルドだ」と語り、作品から伝わる価値を感じてほしいと願っている。