台風10号豪雨10年、福祉施設の避難計画作成進むも訓練不足で実効性に課題
台風10号豪雨10年、福祉施設の避難計画に課題

2016年の台風10号による豪雨災害は、30日で発生から10年となった。岩手県内では小本川が氾濫し、岩泉町の認知症グループホーム「楽ん楽ん(らら)」の入所者9人を含む28人(関連死含む)が犠牲になった。水害を教訓に社会福祉施設では「避難確保計画」の作成が進んだ一方、人手不足が深刻な現場からは十分な避難訓練を実施できていないとの不安の声も上がり、計画の実効性に課題が残る。

避難確保計画の作成状況

台風10号の被害を受け、国は17年に水防法を改正。大雨などに伴う洪水時の浸水想定区域にある社会福祉施設や病院、学校などに避難確保計画の作成や避難訓練の実施を義務付けた。

国土交通省によると、県内で対象となっているのは昨年9月末現在で1314施設。このうち1069施設(81%)が避難確保計画を作成済みという。同省は21年度までに作成率を100%にする目標を掲げたが、達成されていない。

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市町村ごとに作成状況も異なる。奥州市や岩泉町など県内の半数以上の自治体で100%だった一方、盛岡市は77%、釜石市は58%、二戸市は43%などだった。釜石市の担当者は「それぞれの施設で災害を想定していると思うが、計画の提出につながっていないのが現状だ。負担を軽減するために市のホームページでは記入例を公開しており、今後も提出を促していく」と話す。

現場の不安

水防法では年1回以上の避難訓練の実施が義務付けられている。県の調査によると、県が所管する対象の高齢者施設は226施設あり、24年度は88%が訓練を実施した。ただ現場では、実際の災害時への対応に不安は尽きない。

岩泉町門のデイサービス「小川通所介護事業所」には、「要介護3」の利用者も含む計約60人が通う。50メートルほど先には10年前に氾濫した小本川が流れる。「施設利用者や近隣住民を避難誘導する際は、送迎車3台では足りない」と話す佐々木さん(30日、岩泉町で)

施設は豪雨の教訓を踏まえ避難確保計画を策定し、21年には近くの企業や町内会と災害時の連携協定を締結した。万一の場合、従業員らが施設の職員と協力して高齢者の避難を手伝うほか、垂直避難ができるように社屋を提供する。ただ、合同での訓練は同年に1度実施したのみだ。管理者を務める佐々木智佳さん(57)は「(施設側は)受け入れてもらう立場である以上、訓練の話を持ちかけにくい」と話す。

約25年前の開所時に8人ほどいた介護職員は現在3人に減り、佐々木さんが准看護師や介護員も兼務する。施設単独での訓練は毎年実施しているが、職員による口頭確認が主だ。佐々木さんは「本当は利用者の避難誘導までやりたいが、日々の仕事に追われて難しい。人手不足の中でいざという時に対応できるだろうか」と危機感を抱く。

斎藤徳美・岩手大名誉教授(地域防災学)は「異常気象による災害はどこでも発生する。避難計画がない施設は早急に作成し、各地の被害を踏まえて訓練を繰り返すことが重要だ」と指摘。その上で「行政は施設職員の増強を支援するなど、根本的な対策を講じる必要がある」としている。

避難確保計画とは

市町村の地域防災計画が指定する社会福祉施設や医療機関などの「要配慮者利用施設」に作成を義務付ける。避難場所や経路、人員の配置を明記し、市町村に提出する。昨年9月末時点で全国13万3514施設のうち88%(11万7544施設)が作成済み。

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