年を重ねても記憶力を保つには、無理のない運動を長く続けることが効果的だ。米ピッツバーグ大学の高齢者研究では、「ゆるい運動習慣」によって記憶に関わる前方海馬の体積が1年で平均2%増加することが確認された。
運動が脳に与える影響
運動による「スッキリ感」は気分だけの問題ではない。学習という面では、脳内にかなり良い変化が起きている。その中心となるのが、記憶に深く関わる「海馬」と、神経細胞の成長を支えるタンパク質「BDNF(脳由来神経栄養因子)」だ。
海馬は脳の内側の奥にある小さな領域で、新しい出来事を覚えたり、道順をたどったりするときに活躍する。BDNFは神経細胞の「肥料」のような存在で、細胞の生存や成長、つながりの強化を助ける。運動によってBDNFが増えると、神経細胞同士の結び付きが育ちやすくなり、記憶や学習の土台が整っていく。
研究が示すBDNFの増加
コペンハーゲン大学のラスムッセンらは、健康な成人にローイングマシンで4時間の有酸素運動をしてもらい、その間に腕の動脈と首の静脈から同時に採血した。その結果、安静時と比べて運動中は脳からのBDNFの放出が2〜3倍に増え、血液中のBDNFのうち70〜80%は脳から来ていることが示された。
さらにマウスにトレッドミル走をさせると、海馬や大脳皮質でBDNFの遺伝子発現が3〜5倍に増え、運動終了から2時間後にピークに達したと報告されている。つまり、筋肉を動かすことが、そのまま海馬や大脳皮質に「もっと育て」という合図を送っていることになる。
実践のポイント
記憶力を高めるには、運動をしてから勉強すると効果的だ。統計的にプラス効果が確認されており、学習の前に10分だけ早歩きをするのがおすすめとされる。ストレッチや体操よりも、ゆるい運動習慣を週3回程度続けることが、55〜80歳の記憶力改善につながるという。



