特殊清掃会社「関西クリーンサービス」の代表・亀澤範行は、強盗殺人事件が発生した物件を条件付きで買い取った。その条件とは「事件があった物件だと公表する」こと。現在、この物件は親子が集まる意外な場所として生まれ変わっている。
27回殴打された強盗殺人の現場
事件のあった家は、かつて貸金業を営む男性が住んでいた。近隣住民や娘の話によれば、その取り立ては法外な金利で、1階の居酒屋で客に金を使わせては貸し付けるというものだった。返済できなくなった人々への対応は通常の業者をはるかに超えていたと、複数の関係者が証言している。
特殊清掃の作業は血痕の除去から始まった。27回にわたって執拗に殴打されたため、血は部屋のあらゆる場所に染みついていた。作業員が一つひとつ丁寧に除去し、部屋はきれいになった。しかし、問題はここからだった。
買い手が見つからなかった理由
遺族は物件を売却したいと考えていたが、広く報道された強盗殺人事件の現場であり、インターネットで検索すればすぐに情報が出てくる「デジタルタトゥー」が残っていた。物件の名義は母親で、娘は母が生きているうちにすべてを片づけたかった。母の余命宣告はわずかで、一刻も早く安心させたかったのだ。
しかし、事故物件を専門に扱う不動産会社を含む4社に見積もりを依頼したが、すべて断られた。物件の知名度が高すぎる、つまりデジタルタトゥーが残り過ぎているのが原因だった。
条件付きの買い取り
手を挙げたのは関西クリーンサービス代表の亀澤範行だった。「条件つきで、買い取ります」と彼は言った。その条件とは「事件があった物件だと公表すること」。公表することで買い手の不安を払拭し、むしろ関心を集めるという逆転の発想だった。
亀澤は「何があったかは隠しません」と語る。特殊清掃の現場には想像以上に過酷な現実があるが、それを隠さずに伝えることで、物件に新たな価値を見出すことができると考えたのだ。
親子が集まる現在地
買い取り後、物件は改装され、現在は親子が集まるコミュニティスペースとして活用されている。事件の記憶を消すのではなく、それを乗り越えて新たな場所として再生させるという試みは、地域住民からも支持を得ている。
娘は「母が生きているうちに片づけられて本当に良かった」と語る。亀澤の決断は、単なる不動産取引を超え、遺族の心の負担を軽くするものとなった。



