岩手県大船渡市の大規模山林火災から約1年半が経過した2026年5月30日、同市三陸町綾里の市民体育館には、段ボール箱が山積みになっていた。中身は古着を含む衣類、トイレットペーパー、おむつ、生理用品など、被災者に寄せられた支援物資だ。昨年2月末の火災発生直後から集まった物資は大量に余り、現在も処分されずに放置されている。
発災直後から物資が殺到
火災は2025年2月26日午後に発生。翌日から大船渡市役所には企業や個人からの物資提供の申し出が相次ぎ、商工企業課が窓口となった。市は避難所で不足しそうな生活用品を送ってもらうよう依頼し、市民体育館を集積場所に指定した。
最大約4600人に避難指示が出され、当初は火災の広がりや鎮火時期の見通しが立たなかった。担当者は「必要な量を見極めるのは難しかった」と振り返る。しかし、実際の被災地域は一部に限られ、市内の商店は通常通り営業しており、被災者は必要なものを購入できた。そのため物資はすぐに過剰となり、市は発災2日後から「個人からの支援はできるだけ義援金で」と呼びかけるようになった。
仕分けや配布の人手不足
それでも物資の提供は途切れず、避難所にはボランティアも駆けつけたが、配布されない物資が増え続けた。市は物資の仕分けや配布に人手を割けず、結果的に大量の在庫が残った。古着などは衛生面やサイズの問題で配布が難しく、焼却や廃棄にも費用がかかるため、手つかずの状態が続いている。
関西学院大学総合政策学部の小西美穂特別客員教授(元テレビ報道記者)は「避難所の環境改善が議論される一方で、支援物資をどう集め、仕分け、届け、余ったものを処分するのかには、まだ十分な関心が向けられていない。被災地の窮状を伝えるだけでなく、何が足りていて、何が不足しているのかを正確に伝える必要がある」と指摘する。
「第2の災害」と呼ばれる問題
災害支援の現場では、過剰な物資が被災自治体の負担となる「第2の災害」という言葉がある。東日本大震災など過去の大災害でも同様の問題が起きており、専門家は「送り手の善意がかえって迷惑になるケースがある。必要な物資を必要なだけ送る仕組みづくりが急務」と訴える。
大船渡市の山林火災では、焼失面積約2900ヘクタール、約210棟が全半壊した。現在、市は余剰物資の処分方法を検討中だが、具体的な日程は決まっていない。



