英領北アイルランドのモイガシェル村で、反イスラムを意図したパフォーマンスとして、巨大なかがり火(ボンファイア)の薪の上にモスク(イスラム教礼拝所)のレプリカが設置された事件で、警察は9日、公序良俗違反の疑いで56歳の男を逮捕した。
ボンファイアとオレンジメンズ・デーの伝統
北アイルランドでは毎年、7月12日のオレンジメンズ・デーのパレードに先立ち、木製パレットで組まれたボンファイアに火がともされる。この日は1690年のボイン川の戦いでプロテスタントがカトリックに勝利したことを記念する。しかし、火を放つ前に薪の上にはアイルランドの国旗や人形、反カトリックや反移民のプラカードが載せられることが多く、今回もその一環とみられる。
モスク模型とプラカードの内容
中心都市ベルファストから西に約65キロ離れたモイガシェル村の薪には、「国境を守れ」「イスラム過激派の脅威を終わらせろ」と書かれたプラカードが掲げられた。モスクの模型には「イスラム・ファシズム」という文字が書かれ、テロリストを模した人形も配置されていた。警察の声明によると、このパフォーマンスは「ヘイト(憎悪)に起因する犯罪行為」として扱われており、「引き続き状況を評価している」と述べている。
主催者の主張と批判
ボンファイアの主催者はSNSへの投稿で、このパフォーマンスを「大量の不法移民や、不法入国した外国人犯罪者の強制送還の失敗」に対する「政治的抗議行動だ」と説明。警察に対しモスクや人形を撤去するために村に立ち入るなと警告した。これに対し、英政府のヒラリー・ベン北アイルランド相はSNSで「吐き気を催させる卑劣な威嚇行為だ」と非難し、「私たちは団結し、このような憎悪を完全に拒絶しなければならない」と訴えた。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルも「卑劣」であり、「反ムスリムの憎悪をあおり、地元の家族を威嚇しようとするあからさまな試みだ」と批判した。
反移民感情の高まり
モイガシェル村のボンファイアは昨年も、薪の上にボートに乗った不法移民の人形と「ボートを止めろ」と書かれた横断幕が設置され、批判を浴びていた。北アイルランドではここ数週間、ベルファストでスーダン出身の難民の男が市民1人を刃物で何度も刺して重傷を負わせた事件を受け、主に英国への帰属維持を望むプロテスタント系ユニオニストの地域で反移民暴動が発生するなど、反移民感情が高まっている。



