全国でサルによる農作物被害が深刻化している。農林水産省の統計によると、2022年度のサルによる農作物被害額は約10億円に上り、過去10年で最も高い水準となった。特に中山間地域では被害が顕著で、農家からは「作ってもサルに取られる」と悲鳴が上がっている。
被害の実態と農家の声
被害が最も大きいのは和歌山県で、2022年度の被害額は約1億2000万円。次いで長野県が約8000万円、京都府が約7000万円と続く。和歌山県のある農家は「ミカンやカキが熟す前にサルに食べられてしまう。電気柵を設置しても効果が薄く、もう農業を続けられないかもしれない」と訴える。
サルは賢く、一度被害に遭うと繰り返し同じ場所を襲う傾向がある。また、群れで行動するため、一度に広範囲の農作物が被害を受ける。さらに、近年は都市部にもサルが出没し、住民に不安が広がっている。
自治体の対策と課題
各自治体はサル被害対策に乗り出している。例えば、長野県では「サル追い払い隊」を組織し、農家と協力してサルを追い払う活動を行っている。また、和歌山県では捕獲檻を設置し、サルの捕獲を進めている。しかし、サルは学習能力が高く、追い払いや捕獲の方法をすぐに覚えてしまうため、効果的な対策が難しい。
さらに、サルは鳥獣保護管理法で保護されており、許可なく捕獲することができない。捕獲には自治体の許可が必要で、手続きに時間がかかる。また、捕獲したサルの処分方法も課題となっている。
今後の展望
専門家は「サル被害を減らすには、地域全体で取り組むことが重要だ。個々の農家だけでは限界がある」と指摘する。また、サルの生息地を管理し、人里に下りてこないようにする環境整備も必要だ。国は2023年度から「サル被害対策強化事業」を開始し、自治体の取り組みを支援しているが、抜本的な解決には至っていない。
農家の高齢化が進む中、サル被害が農業の持続可能性を脅かしている。地域ぐるみの対策と、国や自治体による継続的な支援が求められている。



