元自衛官が語る、災害派遣で見た「想定外」の現実
元自衛官が語る災害派遣の「想定外」の現実

東日本大震災や熊本地震など、大規模災害が発生するたびに自衛隊が災害派遣される。しかし、元自衛官のA氏は「派遣される隊員は、しばしば想定外の状況に直面する」と指摘する。A氏は陸上自衛隊で約20年間勤務し、複数の災害派遣を経験した。

防災計画と現場のギャップ

自治体の防災計画は、自衛隊の到着を前提としていることが多い。しかし、A氏によると「実際には、自衛隊が到着するまでに数日かかるケースが少なくない。その間、住民は孤立する」という。例えば、2016年の熊本地震では、道路の寸断により自衛隊の進入が遅れ、一部の集落で支援が届くまでに3日以上を要した。

また、防災計画では自衛隊の活動拠点や物資集積所が事前に指定されているが、実際の被災状況によっては使用できないこともある。A氏は「計画はあくまで机上のもの。現場では臨機応変な対応が求められる」と語る。

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情報共有の課題

災害時、自衛隊と自治体、消防、警察などの間で情報共有がうまくいかないケースが多い。A氏は「各組織が独自に情報を収集し、共有が遅れることで、重複した活動や空白が生まれる」と指摘する。特に、被災地の状況が刻一刻と変化する中で、リアルタイムの情報共有が課題となる。

例えば、2018年の西日本豪雨では、自衛隊がヘリコプターで被災者を救助する際、消防が別の場所で活動しており、連携が不十分だった事例がある。A氏は「情報共有の仕組みを平時から構築しておくことが重要だ」と強調する。

隊員のメンタルヘルス

災害派遣では、隊員が過酷な環境で活動するため、心身に大きな負担がかかる。A氏は「遺体の収容や被災者の救助を繰り返す中で、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症する隊員もいる」と明かす。自衛隊ではメンタルヘルスケアの体制を整えているが、A氏は「まだ十分ではない」と感じている。

実際、ある調査によれば、災害派遣を経験した自衛官の約3割が何らかのストレス症状を訴えているという(防衛省調べ)。A氏は「隊員の健康を守るためには、派遣後のケアをさらに充実させる必要がある」と提言する。

自治体と企業への教訓

A氏は、自治体や企業が防災計画を見直す際に、自衛隊の到着を過信しないことが重要だと指摘する。「自衛隊はあくまで最後の砦。住民や従業員自身が最初の72時間を生き延びるための備えが必要だ」という。具体的には、食料や水の備蓄、避難経路の確認、安否確認手段の確保などが挙げられる。

また、企業においては、BCP(事業継続計画)に自衛隊の支援を過度に依存せず、自社で対応可能な範囲を明確にしておくことが求められる。A氏は「自衛隊が来るまで待っていては、事業の継続は難しい」と警鐘を鳴らす。

まとめ

元自衛官の証言から見えてくるのは、防災計画と現場のギャップ、情報共有の課題、隊員のメンタルヘルスなど、多くの改善点である。これらの教訓を踏まえ、自治体や企業は自衛隊の派遣を前提とした計画ではなく、より現実的な防災対策を進める必要がある。A氏は「災害は必ず起こる。その時に後悔しないために、今からできることをやっておいてほしい」と訴えている。

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