大分市横尾のアパートで一人暮らしをしていた五條堀美咲さん(当時24)が行方不明になってから、26日で10年がたつ。大分県警が捜索を続けているが、発見には至っていない。美咲さんの父親(72)は、今この瞬間も娘の帰りを待っている。
父の思い「生きている間に何としても」
福岡県久留米市の自宅で取材に応じた父親は「自分が生きている間に何としても美咲を見つけたい。このままでは死んでも死にきれない」と静かに語った。居間や台所、寝室と、家の中には美咲さんの写真が至るところに飾られている。「写真だけでもいいから、美咲の存在を感じたい」。心に開いた穴を埋めるように増えていった。
美咲さんは2016年9月25日午後11時半頃、アパートを訪れていた友人女性を見送った。翌日未明に友人とLINEでやりとりしたのを最後に、連絡が取れなくなった。
家族の変化と変わらない現実
父親は美咲さんの勤め先から欠勤を聞き、アパートに行くと洗濯物が干したままになっていた。妻と「出かけているのだろう」と思ったが、友人知人に尋ねても居場所は分からず、警察が公開捜査に踏み切っても有力な手がかりはなく、不安と絶望が大きくなった。状況は変わらないまま時間は1日、1年と経過した。
一方、この10年で美咲さんの周りは変わってきた。美咲さんの姉には2人の女の子が生まれ、長女は今春、小学生になり、ひらがなが書けるようになった。美咲さん姉妹が並んだ写真を指さして、「こっちがママで、こっちは美咲ちゃん!」と無邪気な笑顔で話す。
美咲さんの父親は、孫の成長を喜び、叔母を知ってくれていることにうれしさを感じるが、孫たちには、叔母が行方不明だと言えないままだ。「この子たちと美咲が会う日は来るのかな」。姉家族が里帰りして家がにぎやかになるほど、その場に美咲さんがいないさみしさが募る。
情報提供と今後の捜索
大分県警によると、今年8月末までに寄せられた美咲さんに関する情報件数は346件に上るが、今年に入ってからの情報は「似た人を見かけた」など3件にとどまる。父親は「自分も10年前のことはそう思い出せない。仕方ない」と、焦りと無力感が混在する複雑な胸の内を明かした。
肌身離さず持ち歩くスマートフォンに着信が入る度に、「美咲が見つかったかもしれない」と期待する毎日は変わらない。「いつか『おかえり』って言える日が来てほしい」。娘の写真に語りかけた。
大分県警や五條堀美咲さんの家族、知人らは25日午前、JR大分駅前など市内3か所で、美咲さんの写真を載せたチラシ約4500枚を配り、情報提供を呼びかけた。美咲さんが住んでいたアパート近くでは、両親が停車した車のドライバーに「娘を捜しています」と声をかけてチラシを手渡した。配布は毎年、行方不明になった日に合わせて続けている。今回は美咲さんの高校時代、担任教諭だった男性も初めて参加した。
県警は捜索に8月末までに延べ約5万9000人の捜査員を投入している。今月16日の定例記者会見で県警の後藤和樹生活安全部長は「必ず見つけ出すという気持ちで活動を継続していく。どんな断片的な情報でもいいので、積極的に提供してほしい」と述べた。
美咲さんの身長は1メートル49。行方不明時はやせ形で、黒髪のセミロング。情報は大分東署(097・527・2131)へ。