「まんじゅうや」「だんごさん」の票は有効? 神栖市長選訴訟、東京高裁が9月3日判決
「まんじゅうや」「だんごさん」票の有効性、高裁が9月3日判決

茨城県神栖市長選で当落を左右した「まんじゅうや」「だんごさん」と書かれた2票を巡り、東京高裁が9月3日に判決を言い渡す。候補者を指すような呼び名などを有効と認めるかは明確な基準がなく、各地で裁判が繰り返されてきた。専門家からは投票方法の改善を求める意見も出ている。

得票が並び、くじ引きで決着も再点検で覆る

9万人超が暮らす神栖市の市長選が行われたのは昨年11月。市長だった石田進氏(67)と元市議会議長の木内敏之氏(65)の得票が1万6724票で並び、くじ引きで木内氏の勝利が決まった。

しかし、石田氏の陣営からの求めを受け、県選挙管理委員会が票を再点検した結果、今年4月に木内氏の当選を無効と裁決した。結論が翻ったのは、木内氏の有効票の中に「まんじゅうや」「だんごさん」の2票があったからだった。

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木内氏の親族は、明治時代に創業した和菓子製造会社「木内製菓」を市内で営む。市選管は「木内製菓のまんじゅうやだんごは市内で広く扱われ、木内氏を『まんじゅうや』と呼ぶ人がいる」などとしてこの2票を有効としたが、県選管は「木内氏の通称として広く使われているとは認められない」と判断した。

木内氏が提訴、主張と県選管の姿勢

木内氏は5月、裁決の取り消しを求めて東京高裁に提訴した。訴状では「市内では『まんじゅうや』が木内製菓の人間の呼称として定着している」と主張。8月4日に裁判の第1回口頭弁論があり、県選管側は争う姿勢を示し、結審した。

神栖市の雑貨店で働く男性(74)は「木内製菓のまんじゅうは市内ではとても有名だが、木内さん個人に結びつくかはわからない。早く決着をつけてほしい」と話す。

公選法と判例、疑問票を巡る過去の裁判

公職選挙法は、候補者以外の氏名などを書いた投票は無効と規定している。一方で、投票者の意思が明白であれば有効にしなければならないとも定め、1952年の最高裁判決も「投票者の意思が、投票内容から判断できる場合は、なるべくこれを有効とするべきだ」との判断を示している。

総務省によると、投票の効力の判断に当たって、全国一律の指針はない。担当者は「地域の人口規模や風土、似た名前の候補が出ているか否かなど選挙によって事情が異なるため、一律の判断基準を設けることはできない」と説明する。

疑問票を巡っては、これまでも裁判で争われてきた。

75年の新潟県両津市(現・佐渡市)議選では、「酒や」「サカヤ」の記載が問題となり、東京高裁は「候補者の家は代々酒造りを営んでいるが、『酒屋』と呼ばれるのは限られた機会でしかない」として無効と判断した。2005年の徳島県鳴門市議選では、高松高裁が「バンド ヒゲ」と書かれた票について、ひげがトレードマークの「坂東」という姓の候補者の得票と認めた。

疑問票を巡る裁判について、ベテラン民事裁判官は「記載された『呼び名』が氏名と同じくらいに広く通用しているかが判断のポイントとなる」と説明する。

公職選挙法に詳しい白鳥浩・法政大教授(現代政治分析)は「公選法や過去の判例を踏まえても明確な判断基準がなく、選管泣かせになっているのが現状だ」と指摘。その上で「選挙は、有権者の意図を適切にくみ取る必要がある。自治体は、自書式ではなく、記号式の拡大や、電子投票の実施など、選管の解釈の余地が少ない投票方法を検討していくことが求められる」と話す。

電子投票の導入は進まず

投票所に置かれたデジタル端末で投票する「電子投票」は、導入から20年以上たつが、実施された選挙は多くない。

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電子投票は2002年に施行された地方自治体電子投票特例法に基づき、自治体が条例を制定すれば、地方選に限り実施できるようになった。画面に表示された候補者名をタッチペンなどで選ぶため、不正確な記載がなくなる。

30日の香川県知事選では、善通寺市で実施された。ただ、端末のリース料など高額なコストがネックとなっており、総務省によると全国での実施回数は25日時点で27回にとどまる。

一般社団法人「選挙制度実務研究会」(東京)の小島勇人理事長は「有権者の高齢化に伴い、うまく手書きできない人も多くなる。投票の意思を正確に反映できる電子投票を広げていくべきだ」と話している。