車いす送迎中の事故多発、固定方法の不備が原因か 安全性向上へ規格化検討
車いす送迎事故、固定不備が原因 安全性向上へ規格化検討

車いす送迎中の事故、利用者だけが重傷・死亡するケースが相次ぐ

車で送迎されている際に交通事故に遭い、車いす利用者だけが重傷を負ったり、亡くなったりするケースが報告されている。専門家によれば、車いすやその利用者が適切に固定されていない事例が多く、事故の衝撃で車内で体を強打したり、シートベルトで腹部を圧迫されたりする危険性が指摘されている。

茨城県での死亡事故、車いす利用者だけが犠牲に

2025年6月、茨城県阿見町の町道で、老人ホーム送迎用のワンボックスカーが道路右側のコンクリート壁に衝突する事故が発生した。県警牛久署の調査によると、最後部に車いすで乗っていた70代男性が腕を開放骨折し、出血性ショックで死亡した。一方、70代の運転手は左足小指を骨折、助手席後ろの座席の看護師は軽傷であり、車いす利用者だけが亡くなった事故だった。

この事故は、車いす利用者の安全確保が課題であることを浮き彫りにしている。統計が整備されておらず、全体像は不明だが、類似の事故は20年以上前から確認されているという。

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滋賀医科大学の分析、死亡事故の割合が増加傾向

滋賀医科大学の一杉正仁教授(社会医学)が滋賀県内の死亡事故を分析したところ、車いす利用者が同様に死亡した例は、2017年から2019年までが151人中2人(1.3%)、2020年から2022年までは124人中4人(3.2%)だった。このデータから、死亡事故の割合が増加傾向にあることが示唆されている。

一杉教授は、「適切に固定やシートベルト着用をしていなければ、時速40キロから50キロでの事故でも、車いす利用者が亡くなる恐れがある」と警告する。教授が提供した再現実験では、車が時速48キロで正面衝突した場合、後部座席の車いす利用者が受ける衝撃をシミュレーション。シートベルトが適切に固定されていないと、体が腰ベルトの下に潜り込む「サブマリン現象」が起き、ベルトが腹部に食い込む危険性が確認された。

固定方法の多様性と基準の欠如が課題

一般社団法人「日本福祉車輌協会」(大阪府)は、車いすを車に適切に固定し、シートベルトは利用者の肩と手すり下を通して腰骨にかけ、車輪のスポークを通して装着するよう呼びかけている。同協会は、「明日は我が身です」と注意を促し、簡易固定装置や車載用車いすの規格化を検討中だ。

しかし、車いすは本来、車載目的で作られておらず、手すりの下にシートベルトを通せない仕様のものもある。肩のベルトの着用が難しい人がいるほか、固定装置やシートベルトの基準がなく、車メーカーにより方法や位置も異なるのが現状だ。

千葉県佐倉市の介護老人保健施設「佐倉ホワイエ」の担当者は、「120人いれば120通りの固定方法がある」と話し、現場での対応の難しさを指摘する。同施設では、介護職員のサポートで福祉車両に乗り込む車いす利用者の安全確保に努めているが、統一されたガイドラインの必要性が感じられる。

消費者庁が実態調査を開始、防止策を模索

こうした事故を受け、消費者庁の消費者安全調査委員会(消費者事故調)が昨夏から実態調査を始めた。調査では、事故の原因や防止策を検討し、より安全な送迎環境の整備を目指している。関係者からは、早期の対策実施が期待されている。

車いす利用者の送迎における安全性と利便性の両立は、高齢化社会が進む日本において重要な課題だ。規格化や教育の充実を通じて、事故防止への取り組みが求められている。

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