下半身の感覚失いながらも神戸でベーグル店経営、川原さん「同じ状況の人の励みに」
感覚失いながらも神戸でベーグル店、川原さん「励みに」

5年前に病気で下半身の感覚を失った川原未来さん(28)が、神戸市北区の閑静な住宅街でベーグル店を営んでいる。自らの社会復帰の場として昨年8月に開いた店は、今では地域住民が集まる憩いの空間になっている。

美容師から一転、脊髄出血で下半身の感覚失う

川原さんは神戸市内で美容師だった2021年6月、自宅で足に力が入らなくなり、骨盤に激痛が走った。救急車で病院に運ばれ、精密検査の結果、先天的な血管の奇形による脊髄出血と判明。家族は医師から「もう立つことも歩くこともできないかもしれない」と告げられたという。

下半身は人から触られていることも、靴を履いているかどうかもわからなくなったが、悲観することなくリハビリに取り組んだ。足を出す時のリズムや音で、徐々に体の使い方を覚えていった。

入院から約1年半後、自宅に戻りパン作りに没頭

入院から約1年半後、自宅に戻った。感覚は戻らなかったが、発症から約3年後に介助なしでゆっくりと歩けるようになった。ただ、美容師としての勤務は難しく復帰は諦めた。

自宅に戻ってから没頭したのは菓子やパン作り。家族の夕食を作るためだったが、「おいしい」と言ってもらえるのがうれしく、材料や調理法にこだわるようになり、ベーグル店を開くことを決意した。独学で試作を繰り返し、家族や知人ら30人以上に試食してもらった。納得できるベーグルを完成させるまでに3年を費やした。

週3日営業、毎回400個以上を徹夜で仕込む

昨年8月、自宅の一部を改装し、ベーグル店「ulunookurimono(ウルノオクリモノ)」をオープン。ウルは、入院中に迎えた飼い犬の名前で、リハビリの支えになったといい、店名に入れた。

毎週火、木、土曜に開店。前日から、毎回400個以上のベーグルや焼き菓子を徹夜で仕込む。食事系、スイーツ系などボリュームたっぷりの16種類を用意するが、その時にひらめいた材料や調理方法を選ぶため、メニューは毎回異なるという。

地域の憩いの場に、同じ病気の人からメッセージも

敷地内にはミニドッグランも併設し、購入客の飼い犬が遊ぶことができる。時間を合わせて飼い主たちが集まるようになり、コミュニティーも広がった。

当初、障害があることを伝えずに営業していたが、前向きで明るい川原さんの人柄は評判になった。毎週明石市から訪れるパート従業員(44)は「ベーグルはもちろん、川原さんと話すのも楽しみで通っている」と笑う。川原さんは「ベーグルだけじゃなくて、私を目当てに来てもらえるのはうれしい」と話す。障害を明かしてからは、同じ病気を抱える人から「退院したら会いに行きたい」とのメッセージも寄せられたという。

オープンから1年が過ぎ、早々に売り切れる日も増えてきた。店の場所や規模を変える予定はなく、「一人でできる範囲で、より多くのお客さんに楽しんでもらえれば」と話した。午前10時に開店。詳しくは店のインスタグラムへ。