蚊取り線香はなぜ渦巻き形?発明した夫婦のドラマのような人生
蚊取り線香はなぜ渦巻き形?発明した夫婦の物語

蚊取り線香の渦巻き形は、発明者である上山英一郎の妻・ゆきのアイデアによって生まれた。英一郎は1890年、棒状の蚊取り線香「金鳥香」を発明したが、1本が長さ20センチで40分ほどで燃え尽きるという課題があった。「寝ている間も安心」とは売り込めないという問題を、妻のアイデアが解決したのだ。

除虫菊の種がもたらした転機

英一郎は江戸末期、紀州・有田の裕福なミカン農家に生まれた。学問を志して上京し、外国人教師の塾で英語を習得、慶応義塾で福沢諭吉に師事した。「これからはミカンも海外に輸出する時代だ」と地元・有田で起業しようとしていた時、福沢のもとに米国の貿易商H・E・アモアから「ミカンの苗木が欲しい」と相談があった。英一郎とアモアは1885年、鉄道と船と徒歩で有田へ向かった。

翌年届いたアモアからのお礼の品々の中に、除虫菊(シロバナムシヨケギク)の種があった。添え書きによると、これを育てて「巨万の富」を得た者がいるという。除虫菊は欧州のバルカン半島原産で、花の子房の部分に殺虫成分のピレトリンが含まれている。害虫の神経に作用し、麻痺させる効果があり、欧米では家畜のノミ取り粉の原料として使用されていた。

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火鉢から線香へ

英一郎は除虫菊の持つ「蚊よけ」の効能に注目していた。草木をいぶして蚊を追い払う「蚊やり火」は万葉集にも登場する。英一郎が試しに除虫菊を火鉢にくべたところ、蚊が嫌がった。しかし、暑い夏の日に火鉢というのはあまりいただけない。英一郎が考えあぐねていた時、たまたま線香を売る商人と同宿に。それで除虫菊を線香に練り込むことを思いついた。

線香職人を雇って試行錯誤し1890年、英一郎は棒状の蚊取り線香「金鳥香」を発明した。マラリア、日本脳炎などの疫病を蚊が媒介することが解明される以前の発明品だった。

渦巻き形の誕生

棒状の蚊取り線香は1本が長さ20センチで40分ほどで燃え尽きる。「寝ている間も安心」とは売り込めないという課題を解決したのは、英一郎の妻・ゆきのアイデアだった。渦巻き形にすることで、より長く燃えるようにしたのだ。

大日本除虫菊(KINCHO)の創業者・上山英一郎(1862~1943)のひ孫にあたる取締役相談役の上山久史さん(70)は、英一郎のドラマのような人生を語った。久史さんは、道中のことを「まだ交通機関が発達していないので、とてつもなく時間がかかった。道中、アモアさんに本当に着くのか怪しまれたと聞きました。英一郎さんがなだめたようです」と振り返る。

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