2013年に「餃子の王将」を展開する王将フードサービスの社長・大東隆行さん(当時72歳)が射殺された事件で、殺人罪などに問われた特定危険指定暴力団・工藤会系組幹部、田中幸雄被告(59)の判決が16日、京都地裁(西川篤志裁判長)で言い渡される。検察側は組織的犯行の実行犯と位置づけ、無期懲役を求刑。弁護側は無罪を主張している。
起訴内容と初公判での主張
起訴状では、田中被告は氏名不詳者らと共謀し、13年12月19日午前5時46分頃、京都市山科区の王将本社ビル前の駐車場で、車で出勤した大東さんを銃で撃って殺害したとしている。昨年11月の初公判で「私は決して犯人ではありません。『決して』が付きます」と述べた。
状況証拠を積み上げた検察側
田中被告が殺害したことを示す直接証拠はない。検察側は今年6月までの計11回の公判で状況証拠を積み上げた。立証の柱は、事件現場近くで見つかり、被告と一致するDNA型が検出されたたばこの吸い殻2本だ。
30人超に及んだ検察側証人の半数ほどは、吸い殻に関して証言した。「吸い殻は(事件当時と同じ)ぬれた路面で消火した形状だった」(警察官)、「事件前日の朝に出勤した際は(吸い殻は)なかった」(王将本社勤務員)などだった。
このほか、事件前日、大東さん宅前に不審な人物が映っていた防犯カメラ映像や、その人物の歩き方が被告と似ているとの鑑定結果なども示した。検察側は論告で「被告が犯人でないとすれば、説明が極めて困難な事実関係だ」と主張。「組織的な犯行」と指摘した一方、具体的にどのような組織なのかや、動機の言及はなかった。
弁護側は無罪を主張
弁護側は公判で、吸い殻について、たばこを吸った際に生じる白い灰がなかったと指摘。暴力団内部や対立組織の人間が、被告を陥れるために吸い殻を持ち込んだ可能性があると反論した。大東さん宅前の不審な人物に関しても、歩き方の鑑定は不確かな方法で、被告と特定できないと訴えた。
事件当日に被告が福岡県にいた可能性にも言及。被告の妻は証人尋問で「事件の当日はハローワークへ行き、車で幸雄さんに送ってもらったかもしれない」と述べた。弁護側は最終弁論で「検察の証拠では、被告の犯行と裏付けられない」と強調した。
殺人罪は裁判員裁判の対象だが、裁判員の安全への配慮から裁判官のみで審理された。被告人質問は、田中被告が供述しない意向を示したため、実施されなかった。