右翼失ったコウノトリ「かいと」、ついのすみか探し…岡山県が譲渡先を模索
右翼失ったコウノトリ「かいと」、ついのすみか探し…岡山県が譲渡先を模索

岡山県和気町の県自然保護センターで療養中のコウノトリ「かいと」は、今年3月に何らかの事故で右翼の大部分を失い、再び飛ぶことはできない。県はついのすみかとなる譲渡先を探している。

事故で右翼を失ったオスのコウノトリ

かいとは今年3月、浅口市内で保護されたオスのコウノトリ。骨折していた右の翼は大部分を切除せざるを得ず、ケージの中での生活が半年を超えた。センターは文化財として大切に世話をしている。

コウノトリは農薬散布による餌の減少などで国内では1971年に絶滅した。兵庫県などが野生復帰計画を進め、2005年に人工飼育した5羽を自然界に戻す「放鳥」にこぎ着けた。野外の個体は今年8月末時点で728羽まで増え、繁殖地も14府県に広がった。

相次ぐ事故と専門家の指摘

一方で、事故も相次いでいる。「兵庫県立コウノトリの郷(さと)公園」によると、2023~2025年度に電線や自動車に衝突したり、農地の防獣ネットに絡まったりしてけがをし、救護を受けた個体は全国で計47羽。かいともそのうちの1羽だ。

岡山県内では過去に死んだ事例もある。同じ浅口市で2011年4月、電線にぶつかった個体の死骸が見つかり、市教育委員会には「カラスと追いかけ合っていた」との目撃情報が寄せられた。

兵庫県立大の出口智広准教授(再導入生物学)は「限られた場所や地域で手厚く保護できる状況ではなくなった」と指摘。個体増加による「密度」の高まりや生息範囲の拡大が進む中、「餌場となる遊水地を増やすなど地域ごとの取り組みで、生息の適地を回復していく必要がある」と話す。

保護までの経緯と住民の見守り

かいとは2023年4月、福井県小浜市の野外に設けられた人工巣塔で孵化した。父は兵庫県養父市生まれの「誠」、母は島根県雲南市が故郷の「はるか」。小浜市から「特別住民票」を交付され、同年6月13日に巣立ちをして以来、岡山市や赤磐市でも目撃情報があった。

名前は公募で、福井県立嶺南西特別支援学校の生徒が「カイト(凧)のように、大空高く舞って」との願いを込めて採用された。

かいとは3歳を迎え、本来なら繁殖活動もできる成鳥になった。ケージの中で短くなった翼を広げ、空を見上げるようなしぐさをすることがあるという。

かいとが保護されたのは浅口市鴨方町の米(よな)地区。3月9日朝、右の翼から出血し、道路上でうずくまっているのを住民男性が発見し、地区長の亀岡道男さん(65)らが市や県に通報した。かいとはよたよたと歩いて川べりや休耕田へ移動したが、住民らは夜間も警戒し、翌10日に県が保護するまで見守りを続けた。県内ではけがをしたコウノトリを保護した初めてのケースとなった。

米地区には8月、栗山康彦市長から感謝状が贈られた。代表して感謝状を受け取った亀岡さんは「痛々しい姿を放っておけなかった」と振り返った。