被災自治体支援を紡ぐ 吹田市防災政策推進監・有吉恭子さん54
被災自治体支援を紡ぐ 吹田市防災政策推進監・有吉恭子さん54

吹田市防災政策推進監の有吉恭子さん(54)は、被災時の実務や平時の企画立案を束ねる一方、防災分野における研究者として論文執筆や学会での発表にも取り組んでいる。初めて防災担当部署に異動したのは40代だったが、そこから実務と研究の両面で経験や知見を積み重ね、政府の中央防災会議の専門委員にも任命された。

阪神大震災が転機に

市役所に入庁したのは1995年4月。直前の1月に阪神大震災が発生し、大学の卒業試験を免除され、避難所運営などのボランティアに参加した。市役所では長年、防災とは直接関係ない業務を担当したが、東日本大震災をきっかけに関心が高まった。

被災地支援のため、当時配属されていた男女共同参画センターから岩手県に派遣された。そこでは、家庭内暴力や性暴力を受けた女性らが一般の避難所に入れず、身を寄せた寺などで物資が不足するなどの課題があった。

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災害時には女性職員による配慮や視点が欠かせない。しかし、当時、市の防災担当の職員はほとんど男性だった。危機管理室に異動を希望し、実現したのは43歳の時だった。

研究と実務の両立

転機はその2年後。2018年の大阪北部地震をきっかけに、市は防災の専門人材の育成に力を入れる。同年10月から、人と防災未来センター(神戸市)の研究調査員として1年半出向させてもらった。

北部地震では災害対策本部の事務局運営に携わり、会議での議論を詳細に記録していた。発言者や時間、内容を分析した研究が、地域安全学会で優秀発表賞を受賞した。

豪雨や地震に見舞われた九州や北海道などの被災地に赴き、災害対策本部や避難所の運営支援と研究にあたった。吹田市に帰任後、危機管理室長などを務める一方、これまで著者や共著者となった研究論文は約60本。現在、大阪大招へい教授や内閣府の検討会委員などを務めている。

能登半島地震での支援

2024年1月、能登半島地震が発生。有吉さんと市危機管理室の柴野将行・総括参事(48)が総務省などの要請を受け、数日後から石川県輪島市に繰り返し応援に入った。2人は被災自治体の首長らを補佐する同省の「災害マネジメント総括支援員」に登録していたからだ。

他の自治体からは大勢の応援職員が派遣されており、中には被災者の要望や対応の問題点を、多忙で手が回らない輪島市の職員に対して声高に指摘する方もいた。このような行為は相手を傷つけることもある。

2人は職員の過労を防ぐため、業務量調査と交代で休息を取得する制度の導入を提案した。また、応援職員の受け入れ体制整備や会議の運営といった実務も支援した。

これまで支援の対象外だった避難所の集約や閉所、生活再建関連の業務が現地の負担になっていると聞き、吹田市の後藤圭二市長に報告。市独自で支援を継続することが決まった。両市は同年4月に協定を結び、吹田市職員が現地に6人常駐する体制を4か月半続けた。

記録を書籍に

これらの活動の記録は2人の編著による書籍「令和6年 能登半島地震 吹田市が輪島市災害対策本部で一緒に悩んだ36のこと」(ぎょうせい)として形になった。被災自治体の実務や課題を詳細に追跡した本で、災害対応に役立ててもらいたいという。

災害で必要なのは既に起きたことの対応だけではない。根拠のある事実と分析に基づき、先を見越す想像力も求められる頭脳戦だという。自治体支援では、被災地の職員と共に考え、共に悩み、寄り添う姿勢が必要だと語る。

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吹田市出身。関西大社会学部を卒業後、市役所に入庁。国民健康保険課や男女共同参画センターを経て、危機管理室に配属される。2020年から関西大社会安全研究科で学び、博士号を取得。コロナ禍では保健所でワクチン接種を担当し、危機管理室長在任時には不発弾処理に従事したこともある。