「シットロト踊り」大漁と魚の供養願い奉納 室戸市で27か所巡る
「シットロト踊り」大漁と魚の供養願い奉納 室戸市で27か所巡る

高知県室戸市で7月23日、約300年前の江戸時代から伝わるとされる「シットロト踊り」が奉納された。旧暦6月10日の早朝から夕方まで、漁港が並ぶ市中心部を舞台に、約5キロの範囲に点在する神社仏閣など27か所を回り、太平洋からの潮風を受けつつ踊りを奉納する。

夜明け前から始まる奉納

7月23日午前4時45分頃、2か所目の奉納が漁港付近の神社の前で行われた。太鼓と鉦に合わせて歌う音頭役を中心に、20~50歳代の踊り子16人が輪になり、ロープにつり下げられた大漁旗の下で、「ヤァ、シットロト」という長く響く節回しの歌に合わせ、扇子を手に約10分間踊った。その間、空は夜明け前の群青から晴天の夏空へと変わった。

踊りは1963年に県の無形民俗文化財に指定され、現在は地元の「シットロト踊り保存会」が担う。踊り子がかぶる笠は船の帆柱のように伸びて色鮮やかに飾り付けられ、浴衣には魚が描かれている。大漁祈願と航海安全だけでなく、魚の供養も願って踊るという。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

伝統を守り、変化も模索

「昔は優秀な漁師が推薦されて披露していた。簡単には踊らせてもらえなかった」。25歳頃から半世紀にわたって踊りに参加し、音頭役も務めた橋本規矩夫さん(87)は振り返る。現在は奉納場所を車で移動するが、かつては徒歩だった。笠に付けるサルの装飾は「災いが去る」として、地域の女性が毎年縫って作っていたという。

橋本さんから歌を教わり、現在は音頭役を務める柳川洋一郎さん(48)は「昔のことを大切にしながら、変えられるところは変えていけたら」と話す。人口減などを踏まえ、漁師や漁協職員らが担ってきた踊り手を外部から新たに確保する方法も模索する。

室戸の捕鯨と供養の心

室戸は江戸時代初期に始まった捕鯨で栄えた町だった。市内の高台に立つ中道寺には、江戸時代後期に室戸の捕鯨組織「鯨組」の一つが寄進した、高さ約1メートルと約60センチのクジラの位牌3基がまつられ、「鯨魚供養」の文字が書かれている。

踊りの世話役を務めた山川奉明さん(83)は高校卒業後、捕鯨船の船員となった。南極海などで操業し、船の下をくぐって後方に逃げたり、一日中追いかけても捕まらなかったりするクジラを目にした。「クジラにも賢いのがいる。生き物だから供養してやらないと、というのはわからないでもない」と語る。この思いがシットロト踊りの起源の一つかもしれない。

今はクジラ漁はなく、踊り子の浴衣にはマグロ、カツオ、キンメダイと、時代ごとに室戸の港をにぎわわせた魚が描かれている。そんな今も、漁の安全と豊漁を願い、漁で捕らえた相手を悼む気持ちを踊りに託している。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ