愛媛県四国中央市のスターバックスコーヒー店舗で男性を射殺したとして、殺人罪などに問われた同市の無職、前谷祐一郎被告(64)の裁判員裁判で、松山地裁は25日、懲役28年(求刑・懲役30年)の実刑判決を言い渡した。秋田志保裁判長は「全国展開のチェーン店で白昼堂々、拳銃を発射して人を殺害した凶悪な犯罪」とし、「社会にも大きな不安を与えた」と非難した。
事件の概要と判決の内容
判決によると、前谷被告は2024年1月14日午後4時頃、同店舗のテラス席で、四国中央市の石川雄一郎さん(当時49歳)の右胸などを拳銃で3発撃ち、殺害するなどした。
公判では、被告側が起訴事実を認め、量刑が争点になっていた。秋田裁判長は判決で、至近距離から数秒間のうちに3発連続で発砲した殺害方法について、「生命を奪う危険性の極めて高い行為」とした上で、「強い殺意があったことは明らか」と指摘。店の客や従業員の間近で銃弾が放たれたことに触れ、「第三者の生命を脅かしかねない危険性を持った行為。店にいた客や従業員の恐怖や不安感も見過ごせない」と言及した。
被告の主張と裁判所の判断
被告側は「計画性は高くなかった」と主張したが、判決は、銃弾を装填した状態で拳銃を携帯していたことなどから「被害者の態度次第では拳銃を発射する事態を想定していた」と判断。「被害者を始め、多くの人命を危険にさらしかねない行動をあえて計画して実行した」と結論づけた。
事件の動機のほか、被告と被害者の関係性も明らかにされた。双方の冒頭陳述などによると、前谷被告は暴力団組織に所属し、石川さんとは30年以上の付き合いがあったが、次第に疎遠になっていたという。
事件の背景と判決後の対応
22年10月、前谷被告が長年運営にかかわってきた秋祭りで、石川さんらによる乱闘騒ぎが発生。その際にネックレスが壊れたとして、石川さんが祭りの実行委員会に弁償を求めていた。事件の当日、前谷被告は話し合うために石川さんを同店舗に呼び出したところ、「とことんやる」などと言われたことで、犯行に及んだとされる。
秋田裁判長は「決意の背景には、意に沿わぬ者を暴力で排除するという暴力団組織に特有の行動原理、人命を軽視する態度が見て取れ、全く容認することができない」と断じた。
前谷被告は判決を聞き終えた後、秋田裁判長に一礼した。弁護人は控訴するかどうかの意向を明らかにしなかった。