部活動やスポーツクラブの寮におけるトラブルがこの1年、相次いで表面化している。2025年8月には広陵高校(広島)の野球部寮で部員間の暴力が社会問題化し、外部の目が入りにくい寮生活のリスクが浮き彫りとなった。専門家は、スポーツに取り組む子どもたちが暮らす寮の管理に関して、適切な運営を担保する仕組みや法律が抜け落ちていると指摘する。
カップ麺やコンビニの食事も
昨春、東日本にある中学生向けの柔道クラブから2人の生徒が相次いで退所した。寮生活での指導者による暴力とハラスメントが要因だった。関係者によると、このクラブは柔道場に併設した寮に中学生が寝泊まりし、柔道の指導を受けながら近隣の公立中学校に通っていた。運営責任者は柔道の元選手とその母の2人。指導は主に元選手が行っていたという。
寮では食事提供や安全管理などのトラブルも起きた。子どもたちは朝食を食べられないこともあり、夕食をカップラーメンやコンビニの弁当ですませる時もあったという。元選手の母は取材に「私がいる時は食事を作っていた。仕事で私がいない時は子どもたちで作るように言っていた。食材は用意していた」と弁明した。
暴力とハラスメントの実態
指導者の暴力的な指導は日常的で、女子生徒が日記に追い込まれる様子を綴っていたケースもあった。元選手とその母は週に数回しか寮に滞在せず、子どもたちの監視が行き届かない状態だった。専門家は「スポーツ寮は学校法人や企業の寮とは異なり、規制が及ばないグレーゾーンにある」と指摘する。
広陵高校の野球部寮では部員間の集団暴力が発覚し、被害生徒の父親は「学校の調査は何だったのか」と不満を漏らした。こうした事件を受け、スポーツ庁は2026年度から部活動のガイドラインを見直す方針だが、民間のスポーツクラブには適用範囲が限られる。
規制の抜け穴と課題
現在、児童福祉法や学校保健安全法は、学校の寮には一定の基準を課すが、民間のスポーツクラブが運営する寮には適用されない場合が多い。食事の質や安全管理、指導者の資格要件などが不透明なまま、子どもたちが過酷な環境に置かれている実態が浮かぶ。
専門家は「スポーツ寮の実態調査と、最低限の基準を法律で定める必要がある」と訴える。一方で、運営側からは「規制が厳しくなると、寮を維持できなくなる」との声も上がる。保護者や関係者の間では、寮生活のリスクに対する認識が広がりつつある。
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