「スマホ農場」でSNSの閲覧数を偽装、18歳高校生が語る「正義」の歪み
「スマホ農場」で閲覧数偽装、18歳高校生の告白

「スマホ農場」とは何か

SNSの世界で、表示回数や「いいね」を人工的に増やす「スマホ農場」という存在が明らかになった。これは、多数のスマートフォンや基板を集め、自動で操作することで、実際のユーザーがいなくても閲覧数やエンゲージメントを水増しする仕組みだ。朝日新聞の取材に対し、18歳の高校生がその実態を語った。

18歳の運営者が語る内部事情

2026年2月、朝日新聞東京本社に現れたのは、都内の高校3年生の男性。彼は「春から理系の難関私立大に進む」と自己紹介し、記者のXアカウントを1分も経たずに8千件近く表示回数を増やしてみせた。彼によると、茨城県つくば市周辺の3棟の建物に、1000台以上のスマートフォンや基板を設置。パソコンで制御し、YouTube再生やXの「いいね」を繰り返しているという。

この数値は、人気や信頼を得たいYouTuberや企業に販売される。料金はYouTube再生1000回あたり175~750円。2024年ごろから運営を始め、年間の注文件数は「数千万~数億単位」に上る。同年代を中心としたグループで運営し、売上額は非公開だ。

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拠点の内部とセキュリティ

拠点の内部は、二重扉の先に広がる部屋に天井近くまでの棚が60台並び、スマホ本体や基板が冷却用の特殊な液体に浸されている。通信状況を示す赤や黄色のライトが点滅し、24時間稼働している。取材は2日間で計8時間に及んだが、セキュリティを理由に現地訪問は断られた。

スマホ農場の世界的な問題

「農場」は情報拡散だけでなく、詐欺やサイバー攻撃にも利用される。近年、欧米や東南アジアで摘発が相次いでいる。ウクライナでは2023年、約20カ所の「農場」が摘発され、約15万枚のSIMカードが押収された。偽アカウントを使い、ロシア寄りのプロパガンダを拡散していたという。日本の捜査当局は「国内での摘発例は把握していない」としている。

運営者の男性は「違法な手段に使われそうな注文は断っている」と主張する。しかし、この行為は各SNSの利用規約に違反する。彼はその認識を持ちつつも、「高い値段で数値が売買されているのは問題だ。そういうビジネスを滅ぼすため、利益は考えずに売り出している。一度、自分たちが悪に染まる必要がある」と語る。

選挙への関与と「正義」のゆがみ

取材の終盤、男性は2026年2月の衆院選に触れた。ある候補者の街頭演説動画について、「高評価」ボタンを押すよう依頼があったという。選挙関連の依頼はすべて断ったと述べたが、SNS上の数値が政治的な影響力を持つ現実が浮き彫りになった。

この連載では、SNS時代における「正義」の概念が、人工的に作られた数値によって揺らぐ様子を追う。スマホ農場の存在は、私たちが信じる「人気」や「信頼」が、いかに脆い基盤の上に成り立っているかを示している。

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