長野、岐阜両県にまたがる北アルプス北穂高岳(標高3106メートル)で2025年5月、山スキー中に雪崩を誘発し、下の斜面を登っていた登山者の男性を死亡させたとして、長野県警が重過失致死容疑で男性スキーヤーを書類送検したことが13日、捜査関係者への取材で明らかになった。書類送検は3月13日付で、容疑者は長野県警の取り調べに対し、任意の段階で容疑を認める供述をしているという。
雪崩で死亡した登山者と状況
書類送検容疑は2025年5月13日午前、スキー中に雪崩を誘発し、下の斜面を登っていた山梨県北杜市の無職、伊藤勝さん(当時62歳)を死亡させたというもの。長野県警によると、現場は標高約2750メートル付近で、同日午前11時ごろ、雪崩の目撃者から県警に救助要請があった。伊藤さんは県警のヘリコプターで救助されたが、搬送先の病院で死亡が確認された。一緒に登山していた伊藤さんの妻も軽傷を負い、長野県警に被害を訴えていた。
書類送検の経緯と法的評価
長野県警は、スキーヤーが雪崩の危険性を認識しながら適切な回避措置を取らなかったと判断し、重過失致死容疑での書類送検に至った。重過失致死罪は刑法211条に規定され、業務上過失致死とは異なり、一般人の過失が重い場合に適用される。今回のケースでは、スキーヤーが山スキーという危険を伴う行為を行っていたこと、雪崩が発生しやすい条件下で滑走したことなどが考慮されたとみられる。
山岳遭難と法的責任の問われる事例
山岳遭難において、雪崩を誘発した者が刑事責任を問われるのは異例のケースだ。これまでもスキーや登山中の事故で民事責任が問われることはあったが、刑事事件として立件されるのは珍しく、今後のアウトドア活動における安全意識や責任のあり方に一石を投じる可能性がある。北アルプスでは毎年多くの雪崩事故が発生しており、日本雪崩ネットワークのデータによれば、2024-2025シーズンだけで全国で19件の雪崩死亡事故が報告されている。今回の書類送検は、雪崩に対する認識を改める契機となるかもしれない。



