2015年11月のパリ同時テロ攻撃の生存者で、バタクラン劇場に居合わせた男性が自殺した。遺族は「精神的なケアが不十分だった」と訴え、フランス政府のテロ被害者支援体制に疑問を投げかけている。
バタクラン劇場の生存者が自殺
自殺したのは当時29歳の男性で、テロ攻撃で友人の死を目の当たりにしながらも自らは無事だった。しかし、その後PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しみ、精神科での治療を受けていた。遺族によると、男性は「生き残った罪悪感」に苛まれ、十分な精神的ケアを受けられないまま、今年1月に自ら命を絶ったという。
遺族が精神医療の不備を批判
遺族は声明で、「フランスはテロ攻撃の生存者に対して長期的な心理的ケアを提供できていない」と批判。特に、テロ被害者としての公式認定手続きの遅さや、専門医の不足を問題視している。フランスでは2015年のパリ同時テロ以降、約2000人がPTSDの治療を受けたとされるが、支援体制の整備が追いついていない現状がある。
政府の対応と今後の課題
フランス政府は「テロ被害者支援基金」を設立し、心理的ケアの費用を負担しているが、遺族は「手続きが複雑で、実際に支援を受けるまでに時間がかかる」と指摘。また、専門医の数が絶対的に不足しており、適切な治療を受けられない生存者が多いとされる。精神科医のマリー・ドゥ・フォンテーヌ氏は「テロ被害者は長期的なケアを必要とするが、現状では急性期の対応に偏っている」と述べている。
一方、テロ対策専門家のジャン=ピエール・フーケ氏は「フランスはテロ対策に多額の予算を投じているが、被害者支援、特に精神的ケアへの配分は不十分だ」と指摘。今回の自殺事件を機に、政府の支援体制の見直しが求められている。
パリ同時テロでは130人が死亡、350人以上が負傷。生存者の多くが今もなおPTSDなどの後遺症に苦しんでいる。今回の自殺事件は、テロ被害者支援の長期的な課題を浮き彫りにした。



