大学進学率が50%を大きく超え、総合型選抜や学校推薦型選抜といった「年内入試」で入学する大学生が半数を超え、さらに増加傾向にある。この現象の背景には、大学側の変化だけでなく、受験生や保護者の意識変容が大きく影響していると、河合塾教育研究開発本部の近藤治主席研究員は分析する。
受験ハード期を経験した親の影響
近藤氏がまず指摘するのは、現在の受験生の保護者の多くが、18歳人口が多く競争の厳しかった1980年代から2000年代に大学入試を経験した世代である点だ。「自分の入試が厳しかった記憶が強く、子どもに同じような苦労をさせたくないと考えるケースが多い」と同氏は述べる。ただし、数年後からは少子化や入学定員増加により受験競争が緩和した世代の保護者が増えるため、この傾向が続くかは不透明だという。
受験生の入試耐性低下と年内入試へのシフト
近藤氏は、受験生の入試に対する「耐性」が低下していると感じている。同級生が年内に次々と合格を決める中、共通テストで8科目を受け、二次試験もある国立大学を目指す「苦行」に耐えられず、年内入試や受験科目が少ない私立大学に流れる受験生が目立つという。
情報入手の容易さがもたらす影響
一昔前は高校の進路指導室や受験雑誌などに限られていた大学情報が、スマートフォンで簡単に入手できるようになった影響も大きい。自分の成績や学びたい分野を入力するとはじき出された「フィットする大学」に、十分な調査なしで入学を決めるケースもある。関東地方の公立高校で進路指導を担当する教員たちは、「初めて名前を聞くような大学の総合型選抜に、学生と保護者が勝手に出願して合格してしまう。特に保護者の意向で、少し頑張れば届く有名大学を早々にあきらめる生徒も増えている」と証言する。これは近藤氏の指摘を裏付けるエピソードだ。
大学側の情報発信とその偏り
朝日新聞「ひらく 日本の大学」取材班によると、「大半の大学は就職実績や取得可能な資格などのポジティブな情報ばかり提供し、高い中退率や厳しい経営状況といったネガティブな情報は極力伏せようとする」という。受験生や保護者は、大学が公開する情報だけに頼らず、自ら積極的に情報を収集する必要がある。
大学選びで注意すべきポイント
自力で大学選びを進める際には、偏差値や就職実績だけでなく、中退率、卒業後の進路、教育内容の充実度、キャンパスの雰囲気など、多角的な視点から評価することが重要だ。また、オープンキャンパスや在校生の声を直接聞く機会を活用し、実際の学生生活をイメージできる情報を集めることが推奨される。
文科省の情報公開政策と大学ポートレート
文部科学省は、大学の情報公開を促進するため「大学ポートレート」というポータルサイトを運営している。しかし、大学側の期待度は必ずしも高くなく、掲載情報の質や更新頻度にばらつきがある。受験生は、このような公的サイトも参考にしつつ、複数の情報源を比較検討することが望ましい。
将来の展望
少子化が進む中、私立大学の約53%が定員割れしている現状がある。今後、大学間の競争はさらに激化し、生き残りをかけた大学と、淘汰される大学の二極化が進むと予想される。受験生は、単に合格しやすい大学を選ぶのではなく、自分の将来設計に合った大学を慎重に見極める必要がある。



