障害者らが働きながら就労能力の向上を目指す「就労継続支援B型事業所」について、新規開設を止める「総量規制」の動きが全国の自治体に広がっている。作業内容が不適切な事業所もあり、厚生労働省は自治体にチェックの強化を求めている。
不適切な活動の事例と厚労省の指針
厚労省の社会保障審議会障害者部会では昨年10月、働く能力の向上につながらない活動を行う障害者向け事業所がある、との課題が示された。厚労省は同11月、新規開設を申請した障害者向け事業所に対し、自治体がチェックすべき指針を作成。作業内容が働く能力を高め、利用者に報酬を支払える収入が見込まれるかの確認を求めた。実際にあった不適切な例として、植物への1日数回の水やりやeスポーツなどを挙げた。
事業所数が過剰に多いと、行政のチェックが行き渡らず、不適切な活動につながる恐れもある。読売新聞が入手した大阪市内の複数のB型事業所のパンフレットには、利用者の活動内容として▽観葉植物に水をやる▽折り鶴を作る▽在宅でタブレット端末を使い、野菜を検品する――と記載されていた。
これらの事業所の一つは取材に対し、「ひきこもりの人の支援がメインで、慣れてくるまでの作業だ。利用者のためになっている」と説明した。同市東住吉区の「障がい者基幹相談支援センター」の相談支援専門員、平沼遊さん(43)は、障害者らが一般企業で働くことを目指すのであれば、こうした活動内容は不十分だとの見方を示し、「周囲との交流を通じ、本人の自信や仕事の技術を育むことができる環境が求められる」と強調した。
自治体の取り組みと給付金の実態
愛知県一宮市は、2024年度からB型事業所の新たな開設をストップさせた。事業所数が多すぎるため、受け入れ可能人数は、現在も年間の推定利用者数より延べ約1万8000人多い。求人をかけても職員が確保できず、運営継続が危ぶまれる事業所もあったという。
厚労省によると、B型事業所は、国や自治体からの給付金として平均月約300万円を受け取っている。一方で、事業所が利用者へ支払う工賃は1人あたり月約2万4000円程度にとどまる。日本財団公益事業部の竹村利道シニアオフィサーは「支援内容が不適切でも、多額の給付金を受け取れるのが実情。厚労省の指針も踏まえ、支援が本当に障害者のためになっているのか、自治体はチェックを強化すべきだ」と話した。
A型事業所でも不適切事例
障害が重い人の利用が想定されるB型事業所と異なり、障害者らが雇用契約を結ぶA型事業所でも、就労支援を巡り、不適切とされる事例があった。大阪市の福祉関連会社「絆ホールディングス」傘下の四つのA型事業所が2024~25年度、就労支援の加算金約150億円を不正に受け取ったとして、市が事業者指定を5月に取り消した。
利用者らへの取材では、事業所や自宅でアニメなどの動画などを見て過ごす人がいた。元利用者の女性は「スキルは何もつかず、時間だけが過ぎていった」と振り返った。



