オランダ・ロッテルダムで6月5日、今年も「死んだカモの日(Dead Duck Day)」の催しが自然史博物館の前で開かれた。イグ・ノーベル賞かいわいでは、つとに知られたイベントだ。
1995年のこの日の夕方、鳥類研究者で自然史博物館学芸員だったケース・ムーリカーさん(65)は階下の窓に何かがぶつかる大きな音を聞いた。全面ガラス張りのモダンな博物館の新棟には、よく鳥がぶつかり、死んでしまうこともあった。「きょうは何の鳥だ。窓は大丈夫か」と見に行くと、オスのマガモが死んでいた。次の瞬間、予期せぬことが起きた。
75分間の「記録モード」に入った
1羽だと思っていたマガモのそばに、もう1羽、生きたオスのマガモがいた。そのマガモが、死んだマガモと交尾を始めたのだ。
「鳥類学者として極めて珍しい事象を目の当たりにしている、と直感して『記録者モード』に入った。見ているのは自分だけだった。正確な証拠を残さなければならないと思った」とムーリカーさんは振り返る。
時刻、場所、天候、日照条件……。学生時代から身につけていた手順で、あらゆる要素を記録。観察は75分間に及んだ。動画が撮れるスマホなどない時代のことだ。
笑いの先に考えさせる受賞研究
思わず笑ってしまう奇想天外な科学研究に贈られるイグ・ノーベル賞が今年も発表された。創設から35年。この賞のポイントは、笑った後に「何かを考えさせる」部分にある。受賞研究には、それぞれに物語がある。
2026年6月5日の「死んだカモの日」に、ロッテルダム副市長から勲章を受けるケース・ムーリカーさん(左)=Arnaud Roelofsz撮影



