「売春も犯罪もお金になれば同じ」――22歳で闇バイトに走った“伝説のかけ子”は、獄中でそう綴った。ルフィグループの首謀者たちと数十回の面会、数百枚の書簡を交わしたノンフィクションライターの栗田シメイ氏が、その生い立ちと組織の全容を明かした。
6億円を詐取した“伝説のかけ子”の素顔
ルフィグループは、2022年5月から2023年1月にかけて8件の強盗事件(うち被害者1人死亡)を主導した犯罪組織だ。だが、その活動はさらに遡る。2018年ごろからフィリピンを拠点に特殊詐欺を繰り返し、総額約60億円を詐取したとされる。逮捕者は40人超に上る。
ボスの渡邉優樹被告を頂点に、幹部がリクルーター(闇バイトの募集係)や指示役を担い、末端にはかけ子(警察官を装い被害者を騙す役)や受け子(キャッシュカードを受け取る役)がいた。ピラミッド型の構造で、首謀格が遠隔から指示を飛ばす手法は、当時としては前例がなく、捜査当局も全貌把握に苦慮した。
栗田氏は「トップは人心掌握やマインドコントロールの天才だった」と語る。組織内では、幹部が実行役を厳しく統制し、逃亡を防ぐため個人情報を盾に脅す手法が常套だった。
組織を破滅に追い込んだ“女フィクサー”
しかし、組織は内部の崩壊によって破滅へと向かう。資金確保のため、収容所内から犯行をエスカレートさせた背景には、“女フィクサー”の存在があった。栗田氏は「彼女が組織のバランスを崩した」と指摘する。小島との面会は45回以上に及び、その詳細は著書『檻の中のルフィ 闇バイトを生んだ者たち』に綴られている。
ルフィグループの凶悪化の背景には、闇バイトによる末端の使い捨て構造がある。暴力や個人情報の脅迫で駒を集め、使い終われば切り捨てる。この非情なシステムが、組織を巨大化させると同時に、取り返しのつかない暴力を生んだ。
「伝説のかけ子」の生い立ち
“伝説のかけ子”は22歳で闇バイトに応募し、6億円を詐取した。獄中で綴った手記には、幼少期の貧困や家庭環境が記されていた。「お金さえあれば、何をしてもいいと思っていた」と彼女は書いている。栗田氏は「彼女は犯罪をビジネスと捉えていた。罪悪感の欠如が、かけ子としての成功を可能にした」と分析する。
組織のリーダー格は、フィリピンから遠隔操作で指示を出し、日本国内の実行役を操った。特殊詐欺で得た金は、仮想通貨や海外口座を通じて隠蔽された。被害者は高齢者が中心で、総額60億円もの被害が出ている。
栗田氏は取材を通じて、闇バイトが若者を犯罪に駆り立てる社会構造を浮き彫りにした。「彼らは選択肢がなかったわけではない。しかし、短絡的な金銭欲求が正常な判断を奪った」と語る。
ルフィグループの今後
現在、グループの主要メンバーは逮捕され、裁判が進行中だ。しかし、類似の手口を使う模倣犯は後を絶たない。闇バイトの募集はなおもSNS上で行われ、新たな被害者を生んでいる。
栗田氏は「この事件は、闇バイトの危険性を社会に知らしめた。しかし、根本的な解決には、若者の貧困や教育の問題に取り組む必要がある」と警鐘を鳴らす。



