2017年5月、北九州市小倉北区のアパート「中村荘」に放火して住人6人を殺害したとして、殺人や現住建造物等放火などの罪に問われた元住人の井上浩二被告(58)の裁判員裁判の初公判が5日、福岡地裁小倉支部(三芳純平裁判長)で始まった。井上被告は「私は関係ありません」と起訴事実を否認し、弁護側は無罪を主張した。検察側と全面的に争う構図となった。
火災発生から7年余りで逮捕
井上被告は、火災発生から7年あまりを経た2024年9月に逮捕され、その後起訴された。公判は、火災が放火によるものか否かの「事件性」と、井上被告による犯行かどうかの「犯人性」が争点となる。
起訴状の内容と検察の主張
起訴状によると、井上被告は2017年5月7日午後11時10分ごろ、中村荘1階でガストーチのようなもので放火。木造2階建て283平方メートルを全焼させ、住人6人(当時55~84歳)を殺害し、5人に重軽傷を負わせたとしている。中村荘には当時、入居者16人のうち14人が在宅していた。
検察側は冒頭陳述で、火災約1年前に中村荘に暮らしていた被告は、管理会社への不満などから、別の居住者に「火を付けようか」と話していたと説明。事件当日に被告が映ったとするアパート周辺の防犯カメラ映像を踏まえ、被告は当時の自宅からバイクでアパートに向かい、布団が入った段ボールに放火したと主張した。専門家による鑑定や燃焼実験などから失火ではないとした。
弁護側の反論
弁護側は「事件当日は被告はアパート近くには行っていない」とし、検察側が証拠とする防犯カメラ映像について、全ての映像が被告とは言い切れない可能性があるなどと反論した。また、火災についても被告には放火する動機がないとし、出火原因として漏電やたばこの不始末の可能性について言及した。