朝日新聞の情報開示請求に対し、総務省の郵便担当幹部らが参加する業務チャットで「特別延長してほとぼりを覚めさせる」などと、開示決定を意図的に遅らせる趣旨の書き込みが交わされていたことが分かった。実際に開示決定は約3カ月延期され、開示された文書の大半は黒塗りだった。
「放棄・隠匿」と名付けられたグループチャット
書き込みが行われたのは2025年10月2日。日本郵便の問題を取材する朝日新聞記者が、同社を監督する総務省に情報開示請求し、受理された直後だった。
「『A社』から開示請求が来ました」との報告に対し、「まあ木鼻でやる」「特別延長してほとぼりを覚めさせる」「1、2年くらい時間をかけてもよいかと」といった投稿が続いた。「木鼻」は「木で鼻をくくる」の略とみられ、相手の要求に無愛想で冷たい態度を取る意味だという。
投稿されたのは、総務省で郵便を担当する郵政行政部の幹部らの名前が並ぶグループチャット。業務用オンラインツール「Teams」で立ち上げられ、名称は「放棄・隠匿」だった。朝日新聞がこのチャットの文面を独自に確認した。
背景に1年3カ月の不適切な状況
朝日新聞は25年9月、郵便物が捨てられたり放置されたりした「放棄・隠匿」事案の一部を日本郵便が公表していないと報道。総務省は検査で把握し、24年6月に改善を求めたが、日本郵便は報道まで非公表を続けていた。
不適切な状況が把握されてから1年3カ月続いたのはなぜか。総務省がこの間、日本郵便をどう指導していたのかが焦点となった。報道直後に問うと、郵政行政部の幹部は「適切に対応してきた」と述べ、詳細な説明を避けた。
記者が情報開示請求したのは25年9月末。「総務省が日本郵便に確認や指導などを行った内容に関する全ての文書」を求めた。チャットに書き込まれたのは、その請求への対応案だった。
過去の延長事例を参照した書き込みも
チャットでは、21年に発覚した省幹部らの会食接待問題が引き合いに出され、「そうですね、会食問題の際の開示請求対応は、3か月くらい延長した方がいいと現次官から指示がございました」との投稿があった。「確か延長事例(長期のもの)をまとめていたと思います」と、長く開示を延ばした過去の例に言及する投稿もあった。
情報公開法は原則として請求から30日以内に開示決定すると規定するが、対象文書が著しく大量な場合などに期限を延ばす「特例」がある。その特例が「ほとぼりを冷めさせる」ことと結びつけて語られていた。
総務省は実際に特例を適用。朝日新聞に全ての開示決定通知が届いたのは、請求から約3カ月後の26年1月半ばだった。開示文書は公表済みのものが多く、その他の大半は黒塗りだった。
情報公開法は総務省が所管する。朝日新聞は8月10日、総務省全体の総合調整を担う大臣官房総務課にチャットの内容を具体的に伝え、情報公開請求で開示されなかったことも含めて省としての見解を尋ねた。同課は21日、「事実関係を確認中」とした。



