かつての上司が再雇用で部下になる。お互いに気持ちの切り替えは難しく、ぎくしゃくした職場が生まれやすい。しかし、関係を激変させる「魔法の一言」があるという。プレジデント誌2026年7月17日号で、FeelWorks代表取締役で青山学院大学兼任講師の前川孝雄氏が、年上部下の経験や力を引き出し円滑な職場をつくる方法を解説している。
年功序列の残る日本企業で起きている変化
日本企業では長い間、「上司は年上、部下は年下」という関係が当たり前だった。特に大企業では年功序列を前提に組織がつくられてきたため、年齢と役職がほぼ一致していた。しかし近年、その前提が大きく崩れ始めている。
背景にあるのは、高年齢者雇用安定法の改正だ。かつては60歳で定年を迎え、65歳まで再雇用という形が一般的だったが、現在は70歳まで働く時代へ移行しつつある。パーソル総合研究所の調査(2021年6月)では、60代の4割以上が「70歳を超えても働きたい」と回答。また、総務省の「労働力調査」(令和7年)によると、65歳以上が労働力人口に占める割合は13.7%まで上昇している。
「役職」と「偉さ」の結びつきを解く
前川氏は、年上部下との関係改善の鍵は「上司」「部下」という肩書の捉え直し方にあると指摘する。大切なのは、年上部下に対して「あなたが必要な理由」を明確な言葉にして伝えることだ。「遠慮」してしまうと、相手の力を引き出せず、職場の雰囲気も悪化する。
また、「ないものねだり」から「あるもの頼み」への発想転換が重要だという。年上部下の経験や知識をリスペクトし、具体的に「このプロジェクトではあなたの経験が必要です」と伝えることで、関係は劇的に改善する。
具体的なコミュニケーション術
前川氏は、年上部下に対しては「役職で判断せず、一人の人間としてリスペクトする」姿勢が不可欠だと強調する。具体的には、部下としての立場を尊重しつつ、上司としての役割を明確に示すこと。例えば、「私は全体の方向性を決めますが、現場の細かい判断はあなたにお任せします」といった形で、役割分担を明確にする。
さらに、定期的な1on1ミーティングを実施し、年上部下の意見を積極的に聞くことも有効だ。これにより、年上部下は「自分はまだ必要とされている」と実感し、モチベーションが向上する。
日本企業が直面する課題
高年齢者雇用安定法の改正により、70歳までの雇用が義務化されつつある中、年上部下のマネジメントは多くの企業にとって避けて通れない課題となっている。前川氏は、「年上部下に遠慮するのではなく、彼らの力を最大限に引き出すことが、企業の競争力向上につながる」と述べている。
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