スポーツ報道に携わって約20年。かつて選手らへの罵詈雑言といえば球場のヤジがせいぜいだったが、最近はSNSが猛威を振るい、読むに堪えない内容も目立つ。
阪神ファン231人を調査、ヤジの心理的影響が明らかに
プロ野球のヤジで興味深い研究がある。2019年、甲南女子大の垂澤由美子教授(社会心理学)のゼミ生が行った卒論調査だ。阪神タイガースファン231人を調べたところ、「アホ、ボケ」「それでもプロか」という言葉や審判の侮辱は、聞いた側だけでなく、言った側も嫌な気分になっているという回答の方が多かった。
「ストレス発散」の仮説を覆す結果、SNS中傷への示唆
「ヤジを言うとストレス発散になる」という仮説だったが、覆す結果が出た。過去の経験を思い出す方式で調査したため、「試合で負けた」などの記憶が回答に影響した可能性があり、「リアルタイムでも同じ結果なのか」(垂澤教授)という課題は残るそうだ。
ただ、ヤジを発した側も、その瞬間はスカッとしたとしても、時間がたてば否定的に受け止めている。思わず口走った言葉は後悔に変わるのかもしれない。
アジア大会でも問題化、スポーツ報道の原則を胸に
開催中の愛知・名古屋アジア大会でも、SNSなどによる選手らへの誹謗中傷が問題になっている。大多数の読み手には不快だろうし、投稿者もいつか悔やむように思えてならない。
以前、先輩から教わったスポーツ報道の原則は「選手に直接言えないことは書かない」。意に沿わない結果にカッとなりそうな時は参考にしてほしい。(運動部次長 平野和彦)