ベトナム戦争中に米軍が散布した枯れ葉剤の影響とされる結合双生児「ベトちゃん、ドクちゃん」の弟グエン・ドクさん(45)が9日、広島市を訪れ、被爆者の切明千枝子さん(96)とともに講演した。2人は自身の体験を語り、「平和を守って」と聴衆に訴えた。
講演の背景と訪問の目的
ドクさんは1981年、兄のベトさんと下半身がつながった状態で生まれた。86年、急性脳症を発症したベトさんの治療のために来日。その2年後に分離手術を受けた。ベトさんは2007年に26歳で亡くなったが、ドクさんは現在、世界各地で平和の尊さを訴える活動に取り組んでいる。
1961年に米軍が初めて枯れ葉剤を散布してから65年の節目の今年、広島ベトナム平和友好協会などが、広島市南区で枯れ葉剤の被害者支援のチャリティーコンサートを企画。ドクさんはそれに合わせて来日し、8年ぶりに広島を訪れた。
平和記念公園での訪問と講演内容
ドクさんはこの日、広島市中区の平和記念公園を訪れ、広島平和記念資料館の見学や原爆死没者慰霊碑への献花を行った。その後、近くの施設で切明さんとの講演に臨んだ。
約90人の参加者を前に、ドクさんはこれまでの人生を振り返った。分離手術後も2017年までに10回もの手術を繰り返したといい、「毎年のように新しい病気が見つかった」と説明した。広島の爆心地から1.9キロで被爆した切明さんも、下級生を火葬した経験などを伝え、「力を合わせて平和を本気で必死で守っていこう」と呼びかけた。
参加者の声とドクさんのメッセージ
講演を聞いた海田町の女性(77)は「戦争が二度と起こってはいけないという2人の思いが伝わってきた」と振り返った。
講演後に記者会見したドクさんは、切明さんと握手を交わし、「原爆と枯れ葉剤はともに今も影響が大きいもの。被爆者と話をし、勇気をもらった」と語った。