中部電トップ辞任、国のエネルギー政策を傷つける不祥事
中部電トップ辞任、国のエネルギー政策を傷つける不祥事

中部電力浜岡原発のデータ不正問題で、勝野哲会長と林欣吾社長が辞任を表明した。影響は一電力会社の経営問題にとどまらず、国のエネルギー政策を大きく傷つける事態である。

安全審査の取り下げと経営陣の辞任

浜岡原子力発電所3、4号機(静岡県御前崎市)の再稼働に向けて原子力規制委員会に申請していた安全審査を、中部電力が自ら取り下げることを決定した。安全審査で重要な耐震設計の基礎となる基準地震動の策定過程で、中部電が不適切なデータ操作や虚偽の説明を重ねていた。原子力の安全性への信頼を損ねる行為で、絶対に容認できない。

中部電の勝野哲会長と林欣吾社長らが会見し、不正問題の原因究明に当たった調査委員会による報告書と今後の対応を発表した。勝野氏と林氏は責任を取って今月末に辞任する。3、4号機について林氏は組織の改善を進め、「決して諦めることなく再申請に向けた取り組みを進めてまいります」と語った。取り下げが廃炉に直結するものではないとの表明だ。

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再稼働への険しい道のり

将来、安全審査を原子力規制委員会に再申請するとしても、地震動評価を抜本的にやり直し、改めて審査を受けることになろう。中部電は最初の申請から12年を費やしている。再稼働への道程は一段と長く厳しいものになった。

エネルギー問題を巡る内外諸情勢の構図の中に今回の問題を配置すると、不正行為が招いた負の影響の大きさが際立つものになる。第1に、政府は人工知能(AI)の普及などで増加が見込まれる電力需要に対応しつつ安定供給と脱炭素を両立させるため、原子力を「最大限活用」する方針を、昨年2月に掲げたばかりである。その遂行に水を差す不祥事だ。第2に、中東情勢が不安定さを増し、火力発電用燃料を海外に依存する日本の脆弱さが浮き彫りになっている。こうした情勢下で準国産電源である3、4号機の再稼働が遠のくことは、国のエネルギー政策にとっての具体的な痛手である。

信頼回復への課題

調査委の報告書は、一連の不正の原因として中部電社内の一部に「独自の正当化理論」とも呼べる特異な考え方が広がっていたと指摘した。この点にも注目したい。浜岡の再稼働への道を再び開けるかどうかは、社内文化の抜本改革を含め、中部電が自らの手で信頼を取り戻せるかにかかっている。

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