兵庫県伊丹市出身の堀田零生さん(26)が、全盲ながら司法試験に合格し、現在は司法修習に励んでいる。「見えないことであきらめない」と、大学や大学院で健常者とともに学び、在学中の昨年7月に合格を果たした。法廷を模した教室で「人に助けられてチャンスをつかめた。頑張っている人を応援するような仕事をしたい」と語る。
2歳で失明、夢は法律家
堀田さんは眼球の疾患で生まれつき右目が見えず、2歳の頃に左目の視力も失ったため、見えていた時の記憶がない。幼い頃、ニュースで全盲の弁護士がいると知り、憧れを抱いた。「自分も誰かを助けられる人間になりたい」と思うようになった。小学生の時、同級生から「見えへんのに、社会で何ができるん?」と言われて悔しさを感じ、「すごいことを成し遂げたい」と法律家への思いを強めた。
しかし、点字受験の高校入試では全日制に不合格となり、投げやりな気持ちに。通信制に進学したものの、3年間は「引きこもりのような生活」を送った。高校卒業後、視覚障害者向けの職業訓練施設に通い始め、法律家になる夢はあきらめかけていた。
弱視の先輩の合格が転機に
転機は、同じ施設にいた弱視の先輩が司法書士試験に合格したことだった。「目が見えなくてもやれる」と再認識し、「やっぱり法律の仕事がしたい。自分の可能性を追求したい」と大学進学を決意した。予備校には「点字の教材を準備できない」と受け入れを断られたが、19歳だった2019年4月に浪人生も通える京都府立盲学校へ入学。当時の偏差値は38だった。
毎日、朝から夕方まで、1冊で辞典10冊ほどの厚みがある点字の教科書を読み込み、1年後の2020年4月、点字受験で甲南大学法学部に合格した。大学では、教授らの講義内容を持参したパソコンでメモし、帰宅後に音声読み上げソフトで繰り返し聴いた。2024年4月には立命館大学法科大学院に進学し、「あらゆるタイプの問題を解いた」と言えるほど司法試験対策の問題集や過去問と向き合い、在学中の昨年7月に司法試験に合格した。
「視覚障害者の可能性を広げたい」
刑法の授業で堀田さんを指導した特任教授の松宮孝明さん(68)は「特別な教材を用意しなくても普通に授業を受け、障害を感じさせなかった。記憶力も論理的思考力も素晴らしかった」とたたえた。今年3月から1年間の司法修習が始まり、京都地裁や京都市内の弁護士事務所で実務を学んでいる。堀田さんは「困っている人の声を届け、手助けができる弁護士。その声を聴く裁判官。どちらかの仕事をしたい」と考えている。
職業訓練施設の同級生で、今も親交がある全盲の油谷英俊さん(66)(兵庫県明石市)は「心の中でメラメラ燃えるタイプ。彼なら全盲でも、どんな道も切り開いてくれる」と期待を寄せる。堀田さんは、これまで挑戦のたびに「前例がない」と否定されてきたが、「自分が法律家になることで、視覚障害者の可能性を広げたい」と話す。
1981年に全盲者として初めて司法試験に合格した京都弁護士会の竹下義樹弁護士(75)によると、全盲の司法修習生は自身を含め過去に少なくとも6人おり、全員が弁護士になったという。最高裁は取材に「全盲の裁判官は把握している限り、これまでにいない」としている。竹下弁護士は「全盲だと、事件の現場をイメージできない。相手の表情もわからない。できないことは山ほどある。困難は当たり前で、どう工夫するかだ」と語る。



