英領北アイルランドの警察は10日、撤去作戦の実施前に、反イスラムのパフォーマンスとしてモスク(イスラム教礼拝所)の模型が載せられた巨大なかがり火(ボンファイア)の薪に点火されたと発表した。このボンファイアは、モイガシェル村に設置されていた。
撤去直前に点火、憎悪扇動容疑で逮捕
警察によると、モイガシェル村に設置された「ヘイト(憎悪)展示」を撤去する作戦が間もなく実施されるタイミングで点火されたという。警察は「点火されていなければ、警察が現場を確保し、モスクの模型を撤去して証拠として押収していたはずだ」と説明した。
このボンファイアに関連した憎悪扇動の容疑で、56歳の男が10日に近くのダンガノンにある裁判所に出廷した。警察は8日、この男を含むグループが薪の山の上にモスクの模型を設置するのを確認していた。
毎年恒例のオレンジメンズ・デー前の行事
北アイルランドでは毎年、1690年のボイン川の戦いでプロテスタントがカトリックに勝利したことを記念する7月12日のオレンジメンズ・デーのパレードに先立ち、木製パレットで組まれた薪に火がつけられる。薪の上にはアイルランドの国旗や人形、反カトリックや反移民のプラカードなどが載せられることが多く、中には物議を醸すボンファイアもある。
中心都市ベルファストから西に約65キロ離れたモイガシェル村の薪には、「国境を守れ」「イスラム過激派の脅威を終わらせろ」と書かれたプラカードも掲げられた。モスクの模型には「イスラム・ファシズム」という文字が書かれ、テロリストを模した人形も配置されていた。
主催者は「政治的抗議」と説明
ボンファイアの主催者はSNSへの投稿で、このパフォーマンスについて「大量の不法移民や、不法入国した外国人犯罪者の強制送還の失敗」に対する「政治的抗議行動だ」と説明。主催者は予定より1日早く火をつけた理由について、警察の撤去作戦に対抗するためだったと述べた。
英政府のヒラリー・ベン北アイルランド相は、このパフォーマンスを「吐き気を催させる卑劣な威嚇行為だ」と非難した。ベン氏はSNSへの投稿で、「私たちは団結し、このような憎悪を完全に拒絶しなければならない」と訴えた。
人権団体や地元からの批判
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、このパフォーマンスを「卑劣」であり、「反ムスリムの憎悪をあおり、地元の家族を威嚇しようとするあからさまな試みだ」と批判した。
モイガシェル村のボンファイアは、昨年も薪の上にボートに乗った不法移民の人形と「ボートを止めろ」と書かれた横断幕が設置され、政治家たちから批判されていた。
背景にある反移民感情の高まり
北アイルランドではここ数週間、ベルファストでスーダン出身の難民の男が市民1人を刃物で何度も刺して重傷を負わせた凄惨な事件を受け、主に英国への帰属維持を望むプロテスタント系ユニオニストの地域で反移民暴動が発生するなど反移民感情が高まっている。



