2024年現在、65歳以上の一人暮らし高齢者世帯は900万を超え、孤独死は不動産業界にとって無視できない問題となっている。しかし、人が亡くなったすべての物件が「事故物件」として扱われるわけではない。不動産インフルエンサーとして活動する滝島一統氏(株式会社光文堂インターナショナル代表)は、その境界線について具体的な事例を基に解説する。
大晦日の孤独死発見、24時間鳴り続けるテレビが知らせた異変
ある年の12月31日、大晦日の夜。社員が全員休みの中、残業していた滝島氏のもとに管理物件の入居者から電話が入った。「隣の部屋から24時間ずっとテレビの音がしているんです」という不安げな声。隣人は高齢の男性で、滝島氏は直感的に「そういうこと」と悟った。
滝島氏は「こういうときに絶対にやってはいけないことは、自分で鍵を開けて部屋に入ることだ。第一発見者になれば容疑者扱いされ、警察に拘束されて取り調べを受ける可能性がある」と強調する。大晦日の夜、彼は警察に通報し、警官の立ち会いのもとで部屋に入ることにした。若い警察官は当初、先に入るのを渋ったが、説得して中に入ってもらった。戻ってきた警官は「お亡くなりになっています」と告げた。
部屋の中では、男性が布団の上で眠っているように横たわっていた。滝島氏は「死んでいる人間が生きている人間と違うのは、指先や足先がうっ血して血入りソーセージのように腫れていることと、唇が乾燥して消えていくこと。それ以外はほとんど変わらない。安らかな顔だった」と振り返る。
特殊清掃現場の実態、遺体が溶けると告知義務が発生
滝島氏は別の機会に、事故物件の特殊清掃現場にも立ち会ったことがある。3月に亡くなり、1週間後に発見されたケースで、暖房をつけたまま死亡したため室内はサウナ状態となり、遺体の損壊が著しく、通常の救急車では搬出できず特殊車両が必要だったという。
発見から約2カ月後、遺族が私物を片付け、特殊清掃業者が入るタイミングで滝島氏も立ち会った。部屋に足を踏み入れると、ベッドがあった場所の畳に大きなシミが広がっていた。遺体があった痕跡だ。窓を開け続けていたため臭気はほとんどなかったが、注意して嗅ぐと「くさやの匂いを薄めたような悪臭」がした。畳を剥がすと、その下の床板にまで体液が染み込んだ跡が残っていた。
滝島氏によると、事故物件としての告知義務が発生するかどうかの分岐点は「遺体が溶けているかどうか」にあるという。早期に発見され、遺体が原形をとどめている場合は「心理的瑕疵」が軽微とみなされ、告知義務が免除されるケースがある。一方、長期間放置され体液が染み出したような物件は、明確な告知義務が生じる。
「高齢者お断り」では商売にならない現実
単身高齢者の増加に伴い、孤独死のリスクは高まる一方だが、滝島氏は「高齢者お断り」という対応は現実的ではないと指摘する。「賃貸経営において高齢者を排除すれば、入居者不足で商売にならない。早期発見・早期対応の体制を整え、次の入居者に安心して住んでもらえる環境を作ることが重要だ」と述べる。
また、賃貸物件の場合、事故物件としての告知義務には時効があり、一般的に3年程度で義務が消滅するケースが多い。しかし、売買物件ではこの時効が適用されない場合もあり、注意が必要だ。
滝島氏の著書『その家、買ってはいけない』(PHP新書)では、こうした事故物件の実態や不動産取引における注意点が詳しく解説されている。



