三重県鳥羽市のミキモト真珠島で8月6日、名物行事「海女の実演」の開始直前に、小型漁船から転落した男性漁師を観光海女船の船長と海女らが救助した。鳥羽海上保安部は9月10日、船長と海女ら計4人に感謝状を贈った。
異変に気づき救助へ
実演が始まる午前11時半ごろ、「いそぶえ」船長の山口翔斗さん(26)が異変に気づいた。真珠島東側の桟橋から3人の海女を乗せて出船し、海女を海へおろす準備中だった。船の後方、約150メートルの海域から大きなエンジン音が聞こえてきた。
山口さんが振り返ると、船首を水面に出し、激しく旋回する1隻の小型漁船があった。近くには投げ出された男性漁師の姿があった。山口さんは、海女を船に乗せたまま救助に向かった。
冷静な判断と連携
船内にいた「海女頭」の長谷川奈美さん(55)は、遠くから見る限り男性の泳ぎはうまそうだったが、パニックを起こしてもおかしくない状況だったため、「万が一のときは心臓マッサージを施そう」と考えた。
鳥羽海上保安部によると、小型漁船は航行中に流木と接触し、反動で男性が海に投げ出されたという。男性は現場に駆けつけた海女船まで泳ぎ、船体横の段差をつたって乗り込んだ。男性にけがはなかった。
実演を予定通り披露
5分後、救助を終えた船は真珠島の2階建ての観客席の前に戻り、予定されていた実演を披露した。この日も国内外から100人近い観客の前で、昔ながらの磯着に身を包んだ観光海女が素潜りを披露した。
事故があった場所は、漁船のほか伊勢湾フェリーや貨物船などが数多く行き交う海域だという。同保安部は9月10日、山口さんと長谷川さんに加え、ともに海女船に乗っていた平川恵史子さん(58)と蜂谷泰葉さん(33)の計4人に感謝状を贈った。
ミキモト真珠島によると、観光海女や船長が人命救助したことは過去に例がないといい、山口さんと長谷川さんは「初めての経験だが冷静に対応できたと思う。男性が無事で何よりだった」と話した。