中国外務省が、世界保健機関(WHO)の次期事務局長選に自国の公衆衛生の専門家、宋莉氏を擁立すると明らかにした。産経新聞の社説は、新型コロナ禍で中国共産党政権が最も初期の段階で情報隠蔽に走ったと指摘し、この発表を「啞然とする発表だ」と評している。
新型コロナ禍での中国とWHOの対応
社説は、ウイルスが瞬く間に世界中に広がり多くの人が命を失ったとし、WHOのテドロス事務局長が中国におもねる姿勢を取り続け、緊急事態宣言の発出も遅れたと批判。中国をこの大失態の「共犯」と位置づけている。
社説は、新型コロナ禍に少しでも責任を感じていれば次期事務局長選に自国から候補を出すことなどないはずだと主張する。共産党独裁の中国の専門家は中国政府の厳格なコントロール下にあり、コロナ禍への反省のない中国が事務局長ポストを取れば世界の人々の命や健康を脅かす事態になりかねないと警告している。
来春の選挙と日本の役割
WHOには公正で中立な事務局長を選ぶことが欠かせないとし、来春の事務局長選にはサウジアラビアやベルギー、カタールが名乗りを上げていると伝えている。そのうえで、日本は欧州などと協力し宋氏の当選を阻止してもらいたいと訴えた。
中国は新型コロナウイルスの起源の調査にも非協力的だった。2019年12月に中国・武漢市で初めて確認されたが、WHO調査団の現地入りが認められたのは発生から約1年後で、自由な調査は阻まれた。また中国はWHO総会への台湾のオブザーバー参加を妨害している。ウイルスにとって国境や地域の壁はないのに空白域を作るのは国際社会への背信行為だと社説は断じている。
WIPOで前例、米国の不在
中国外務省報道官は「宋氏が選出されれば、WHOが全人類の健康と福祉の向上に、より積極的な役割を果たすと信じている」と述べたが、社説は耳を疑うと反応した。
中国の候補者の当選を阻んだ前例はある。2020年に行われた国連の専門機関、世界知的所有権機関(WIPO)の事務局長選だ。当初、中国出身の候補が有利といわれたが、米国が中心となって選挙対策を進め、シンガポール出身の候補が当選した。その米国はWHOを脱退し不在だ。
社説は、日本政府に対し、次期事務局長選は世界の人々の命と健康がかかった重要選挙だと各国に訴え、職責にふさわしい人物の当選を実現すべきだと求めている。