徳島大病院(徳島市)は、血液がんの多発性骨髄腫治療に患者自身の免疫を利用する「遺伝子改変免疫細胞療法(CAR-T細胞療法)」を開始した。血液内科診療科長の松岡賢市教授(52)は「主要な悪性血液がんに包括的な対策ができるようになった」と述べ、県内外から患者を受け入れる方針を示した。
多発性骨髄腫の特徴と診断の難しさ
多発性骨髄腫は骨髄の細胞ががん化する病気で、骨がもろくなったり貧血が続いたりする。化学療法では再発を繰り返すうちに薬が効きにくくなる。血液がんの中では白血病、リンパ腫に次いで患者が多く、高齢者を中心に10万人あたり5、6人が発症する。徳島県内では年間約50人が新規に発症すると推定される。
この病気は健診や人間ドックの一般的な検査では見つかりにくく、腰痛や骨折をきっかけに整形外科を受診したり、貧血や腎機能障害で内科を受診した際に気付かれることが多い。進行すると骨折や強い痛みで動けなくなり、感染症を併発することもある。松岡教授は「腰痛が続く、骨折を繰り返す、貧血がある、腎臓の機能が悪いといった症状や検査異常が重なる場合は、医師に相談してほしい」と話す。
CAR-T細胞療法の仕組みと実施状況
今回の療法は、患者の血液からT細胞(免疫細胞)を取り出し、米国の製造施設に送ってがんへの攻撃力を高める遺伝子改変を施し、「CAR-T細胞」と呼ばれる製剤にして患者の体内に戻す。製剤化には4~6週間かかる。製剤のT細胞表面にはがん細胞の抗原を認識する部分があり、抗原と結びついてがん細胞を攻撃する。
徳島大病院では2025年6月から悪性リンパ腫にこの療法を導入し、すでに12件に適用。多発性骨髄腫への第1例は2026年5月半ば、徳島市内の60歳代男性に対して実施された。男性は化学療法などの効果が薄れていたため4月にT細胞を採取し、製剤を点滴で注入。後遺症がないことを確認して約20日で退院し、月2回程度の通院を続けている。
四国内の治療拠点として
四国でこの療法を実施できる施設は徳島大病院と愛媛大医学部付属病院のみで、県内のほか香川県東部や淡路島からの来院も想定している。松岡教授は受診・診断に至っていない患者が一定数いるとみており、「新たな療法や薬が次々に開発されている。『高齢だから』と諦めないで、ぜひ受診してほしい」と呼びかけている。



