iPhone発売日の長蛇の列が消えた理由 3つの背景を解説
iPhone発売日の長蛇の列が消えた理由 3つの背景

かつてiPhoneの発売日といえば、Apple Storeの前に長い行列ができるのが当たり前の光景だった。ニュース映像では早朝に並ぶ人々の姿が映し出され、カウントダウンとともにハイタッチで入店していく様子は、まさにテクノロジーの「お祭り」そのものだった。しかし、近年はその姿をほとんど見かけなくなり、発売日であってもメディアで大きく報じられることはなくなっている。

なぜ昔のような行列や盛り上がりは姿を消したのか。そこには製品の成熟、感染症対策による変革、転売対策の強化という大きく3つの理由が存在する。具体的に解説する。

理由1:製品の普及と「コモディティ化」

まず挙げられるのが、iPhoneという製品自体の成熟と普及(コモディティ化)だ。今やiPhoneは一部のガジェット好きが求める特別な存在ではなく、日常生活に完全に溶け込んだインフラとなった。

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年々カメラや処理性能の進化は続いているものの、かつてのように「見た目や使い勝手の劇的な変化」への期待感は薄れてしまった。直近ではApple初の折りたたみスマートフォン「iPhone Duo」が注目されているが、誰もが気軽に買える価格ではない。そのiPhone Duoを除けば、Proや無印(2026年9月に18無印の発表はありませんでした)は1つ前の世代から見た目、スペックといった観点で大きな進化はしていない。

理由2:コロナ禍(2019年〜)を契機とした販売スタイルの転換

2つ目の要因は、2019年以降のコロナ禍による外出自粛と密集回避の要求だ。感染対策の観点から店舗前での密や混雑を避けるため、Appleや大手キャリアは当日販売を原則廃止し、Webサイトなどで受取枠を事前予約させるシステムへと完全に舵を切った。そのため、予約をせずに店頭で並んで発売初日入手分の在庫を狙って買うこと自体が難しくなった。加えて、事前予約して指定時間に受け取るスタイルが定着し、人数を数えるのが困難なほどの長蛇の列は決定的に減少した。

理由3:転売対策の強化と「事前ルール非告知」方針

3つ目は、過熱する転売行為に対する店舗側の水際対策だ。かつての当日販売では、買い占めや高額転売を目的とした集団が列に割り込み、警察が出動するほどの混乱を生むケースがあった。これに対しApple Store各店舗では、転売グループによる組織的な並びや買い占めを未然に防ぐため、事前予約制の厳格化を実施した。

さらに近年では、「購入時のルールや指定手続きの有無を、事前にSNSや公式サイトなどで都度告知しない」という運用を取るようになっている。いつ・どのような条件で販売されるかが事前に明かされないため、転売目的の集団があらかじめ行列を形成しづらくなっている。

余談だが、行列の様子はニュースで取り上げられる機会が減っている。……といっても、まったく報道されなくなった、ということではなく、行列の様子を伝える報道の動画を目にする機会が減ったという意味だ。先に触れた通り、店の前で待ったからといって発売日当日分の在庫を予約なしで入手しづらくなり、予約から店頭での受け取りが基本のスタイルになったため、長蛇の列ができづらくなり、報道する側としては「予約なしの早朝組」を動画で伝えづらくなったのだ。

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一見「盛り上がりが冷めた」ように見えるが、iPhoneの人気や知名度が落ちたわけではない。行列が減少した今こそが「健全な姿」なのだ。2010年の「iPhone 4」発売時には、前日から数百人が並び、スタッフから水や日傘が配られるほどの熱気があった。しかし、過剰な盛り上がりは近隣トラブルや買い占めといった社会的負荷も生み出していた。事前予約や日時指定受け取りが整備され迎える発売日は、転売目的などを目的とした人々の行列を避け、限られた人が新製品を発売日に入手できる状況になっている。かつては当たり前だった過熱するお祭り騒ぎは、昔に比べて静かになったのではないだろうか。