徳島大学病院(徳島市)は、血液がんの一種である多発性骨髄腫の治療に、患者自身の免疫細胞を利用する「遺伝子改変免疫細胞療法(CAR-T細胞療法)」を開始した。血液内科診療科長の松岡賢市教授は「主要な悪性血液がんに包括的な対策ができるようになった」と述べ、治療拠点として県内外から患者を受け入れていく方針を示した。
多発性骨髄腫とは
多発性骨髄腫は、骨髄の細胞ががん化する病気。骨がもろくなったり、貧血が続いたりする症状が現れる。化学療法では再発を繰り返すうちに薬が効きにくくなる。血液がんの中では白血病、リンパ腫に次いで患者が多く、高齢者を中心に10万人あたり5、6人が発症する。県内では計算上、年間約50人が新たに発症している。
健診や人間ドックの一般的な検査では見つけることが難しい場合がある。そのため、腰痛や骨折をきっかけに整形外科を受診したり、貧血や腎機能障害で内科を受診したりした際に気付かれることが多い。進行すると骨折や強い痛みで動けなくなり、感染症を併発することもある。松岡教授は「腰痛が続く、骨折を繰り返す、貧血がある、腎臓の機能が悪いといった症状や検査異常が重なる場合は、医師に相談してほしい」と話す。
CAR-T細胞療法の仕組み
今回の療法は、患者の血液から白血球の一種であるT細胞(免疫細胞)を取り出して利用するため、比較的安全とされる。米国の製造施設に送り、がんへの攻撃力を高める遺伝子改変を施し、「CAR-T細胞」と呼ばれる製剤にして患者の体内に戻す。製剤が戻ってくるまでには4~6週間かかる。
製剤のT細胞の表面には、がん細胞の抗原を認識する部分があり、抗原としっかり結びついてがん細胞を攻撃する。徳島大病院では2025年6月から悪性リンパ腫にこの療法を導入し、すでに12件に適用している。
多発性骨髄腫への適用第1例は、2026年5月中旬に徳島市内の60歳代男性に対して実施された。男性は化学療法などの効果が薄れていたため、4月にT細胞を採取。製剤になって戻ると点滴で体内に注入した。後遺症がないことを確認し、約20日で退院。以降、月2回程度のペースで通院しているという。
県内外からの患者受け入れ
四国内で今回の療法を実施できる施設は、徳島大病院と愛媛大学医学部付属病院の2施設のみ。県内のほか、香川県東部や淡路島からの来院も見込んでいる。
松岡教授は、受診・診断に至っていない患者が一定数いるとみており、「新たな療法や薬が次々に開発されている。『高齢だから』と諦めないで、ぜひ受診してほしい」と呼びかけている。



